技術側ではパフォーマンス向上のための再実装を行っている中、尾崎と坂本はニコスクリプトのサンプル動画を作りながら、現状のニコスクリプトの仕様の問題点を洗い出し、どうすればもっとユーザーが使いやすい仕様になるかを考え、その都度、志賀や藤田へ提案に向かった。
2人の提案を形にするには、ニコスクリプトからニワン語に変換するシステムの修正をしなければならない。2人が来るたびに、志賀か藤田のどちらかが開発の手を止めて、仕様修正に取り組んでいては、また公開日に間に合わなくなる、とスケジュールを危惧した志賀は、とあるアイデアを思いつき上司である鈴木に提案した。
僕らではスクリプトエンジンとプレイヤの実装で手一杯で、ニコスクリプトの言語解析部分まで着手しきれません。しかし、両者の実装作業を分離させて分業体制で実装することができれば、企画制作側の提案にも迅速に対応できることになります。なので、ニコスクリプトの言語解析部分を担当できるエンジニアをプロジェクトに加えてください!
研究開発本部 第二開発部 ポータル機能開発セクション
【齋藤 宏多】
ニコニコ動画のWebシステムを担当。「ニコスクリプト」ではスクリプト言語を元に、簡易命令の実装を担当。
鈴木は考えた。「企画制作側とうまく連携しながらニコスクリプトの解析部分をActionScriptで実装できるのは【齋藤】しかいない」。こうして、齋藤が新たなプロジェクトメンバーとして迎え入れられた。
依頼を受けた齋藤は早速、ニコスクリプトの解析部分を実装し、さらに尾崎や坂本らからの提案に答えながら、共にユーザ視点で仕様を検討し、着々とニコスクリプトの仕様のレベルアップを行っていったのだった。
こうして技術側と企画制作側がフル稼働する日々を過ごして迎えた11月26日、ニコスクリプトを無事にリリースした。リリース作業を終えた志賀・藤田・齋藤は一安心、とはいかず、すぐに追加の仕様や不具合の対応に追われていた。
そう、ユーザーがニコスクリプトを使い出してくれているからだ。ユーザーの反応は、好感触で、ニコスクリプトを試行錯誤しながら使い、自分の投稿した動画にゲーム要素を盛り込むユーザーが徐々に増えていった。
現在では、プレミアム会員限定から一般会員にも公開を広め、ニコスクリプトの機能が着々と浸透しつつある。ニコニコの進化はまだ始まったばかりである。