「松阪を変えようという思いで皆さんがつながった」。圧倒的に不利との声にさらされながら、三十三歳の若さで現職を打ち破った山中光茂氏。松阪市船江町の選挙事務所で開口一番、目を潤ませながら力を込めた。
開票が始まる前から事務所に駆け付けた支持者らは、当選確実の一報が入ると歓声を上げた。山中氏が登場すると、「われわれがついているぞ」などと声を掛け、全国最年少市長の誕生を祝福した。
「しがらみだらけの政治を変えたい」。山中氏は一貫して特定の政治勢力に縛られない市政運営を強調し、組織に頼らずに地域を地道に回る活動手法に結実。選挙戦では大型公共事業に予算が集中する現市政を批判し、市民の声を広く聞いて医療や福祉などの施策を優先していく考えを訴えると、じわりと支持を広げていった。
自民、民主両党などが実質的に支援し、地元選出の衆院議員や県議、市議らを相手にしながら手にした初当選に、山中氏は報道陣の質問に応え、「まだスタートライン。現場の痛みに寄り添っていきたい」と気を引き締めた。
◆投票率51・53%
松阪市選管によると、二十五日に投開票された同市長選の投票率は51・53%で、市町合併前の旧市で行われた二〇〇〇年の51・16%をわずかに上回った。
今回の市長選は、現職と新人の二候補が九年ぶりの選挙戦を繰り広げたが、有権者の関心を集められなかった。二十四日までの六日間の期日前投票は六千三百四十六人で、不在者投票は七百十一人だった。
◆求められる「成果」
大方の予想をはねのける勝利だった。自民、民主両党の衆院議員らが支援する現職に対し草の根で批判票を取り込んだ山中氏。変革を訴える姿が、新たなリーダーを求める市民感情と重なったと言える。
選挙戦で現職は、労働組合など組織を総動員し、各地の個人演説会の会場を多くの有権者で埋めた。一方、山中氏は知人らの協力で戦い、大型公共事業に集中する予算を「『現場』や『痛み』に近い施策に振り向ける」と繰り返した。
県議一期目の任期途中での転身への批判には「市長になって取り返したい」と強調。政治信念を切々と語り続けた結果、「今の市政を刷新してほしい」との声が寄せられるまでに浸透を見せた。
ただ、政治手腕への疑問から「相対的に議会の力が強まる」とみる市議も。小学校六年生までの医療費無料化などの政策公約も、財源の裏付けがないという指摘は根強い。成果の積み上げこそが求められる。
(我那覇圭)
◇松阪市長選開票結果
当 38,571 山中光茂 33 無新
30,742 下村猛 68 無現
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