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講演「被爆地長崎と憲法9条の危機」

 NBC長崎放送の関口達夫(58)記者の講演を聞いた。彼が長年現場で積み上げてきた資料や経験をベースに被爆地長崎や佐世保港への米国軍艦の頻繁な寄港が憲法9条の改正にもたらしている影響の数々について披露した。再認識し、改めて考えさされた。

 NBC長崎放送はTBSをキー局にしたJNN系列で(MBS、RCCなど28局)関口記者は現場に拘り続けているNBCの看板記者。「天皇の戦争責任はある」との発言に反発して平成2年1月に長崎市役所玄関で発生した本島市長の右翼襲撃現場に居合わせ、いち早く全国に第一報を伝えた。
 また、「公共工事の指名除外」を逆恨みして、平成19年4月の市長選挙の最終日に起きた伊藤市長を暴力団員が襲った事件でもインタビューの約束を待ち受ける目の前で発生。これもいち早くJNNニュースで全国へ伝える数奇な経験をしている。彼が一層、現場主義に拘る所以で、原爆・被爆者・平和問題もすでに20年以上担当し、佐世保支局にも2度の勤務で在日米軍事情にも精通している。講演内容を要約した。

 「長崎港への核保有国の軍艦の入港は認めない」という長崎市と議会の決議で’74年(昭和49年)以降米国の軍艦の入港はなかったが、’86年(昭和61年)本島市長が米軍艦の乗組員にも原爆資料館を見て欲しいと入港を認めたのを契機に米軍艦の寄港が相次ぎ、今も続いている。米国海軍の基地がある港は沖縄以外では佐世保と横須賀だけだが、今では長崎、呉をはじめ全国の多くの港に軍艦を寄港させている。
 その狙いを、ある米艦長は「友好親善と乗組員の休養」と言ってきたが『抵抗を克服する事』と市民に米艦寄港を慣れさせて抵抗を無くす…と発言している。

 当初、米艦船寄港に5万人を超えた抗議の波は、今ではすっかり慣らされて?数える程度に減っている。この間、日米両国は安保体制維持強化をし‘99年(平成11年)には安保条約では果たせない、日本周辺で米国が戦争を起こした時に自衛隊や自治体、民間業者までもが給油や輸送、修理などに支援できる“周辺事態法”の法制化を行った。
 
 2001年(平成13年)に米軍艦等に給油するテロ特措法、’03年にはイラクに給水や医療支援で自衛隊派遣するイラク特措法を成立させ次には自衛隊が掃討作戦や警護、テロリストの船舶立ち入り検査を行い武器使用も緩和して武力行使に踏み込める「海外派兵恒久法」の成立を目指している…と指摘する。

 民主党も国連決議があれば武力行使は認める立場で、法案が国会に提出されれば成立の可能が高い…と見ている。

 また、政府はソマリア沖の海賊行為からタンカーや商船を守るのに海上自衛隊の護衛艦を派遣する為の「海賊対策特別措置法案」を1月召集の通常国会に提出の予定だ。
これで海賊取り締まりを口実に武器使用しても憲法が禁ずる武力行使に当たらないとの解釈を持ち込もうと狙っているとの見方は強い…。

 政府与党は「海賊対策特措法」「海外派兵恒久法」を突破口に“武力行使”をなし崩しにして、実質的の憲法の改正を目指している…のではなかろうか。自民党は’05年に憲法改正草案を作り改正を目指していることからも判る。

 憲法9条が改正され自衛隊の武力行使が可能になれば米国が戦闘行動に入れば共同行動に参加する事になり、日本の港は戦闘で破損した軍艦の修理や弾薬物資食糧の中継基地になって被爆地も戦闘行動の支援に加担する…事になりかねない。

 神戸市は、寄港する外国の軍艦に核兵器を搭載していないこと証明する“非核証明書”の提出を義務図付けている。米国は核兵器搭載の有無を明らかにしない為,’75年以来軍艦の寄港はない。全国の港を管理する自治体が神戸方式で非核闘争に繋がる可能性もある。

 被爆地広島で考えてみるとこれに当てはまることはないだろうか。
呉港や広島港に時折入港する米軍艦の目的も「友好親善」より「抵抗克服」だったと見れば今後考えねばならないことが多いように思われる。国が強引に整備を進める米軍岩国基地が近い広島。
呉の大和ミュージアムが平和に貢献する趣旨の博物館なのだろうか。見た事はないが米国スミソニアンのエノラゲイ号の展示と同じ“武力誇示・戦争回顧”ではないか気掛りだ。

 民間港や民間空港への米軍艦・航空機の利用は全国的な問題だ。
被爆地広島での軍艦寄港の中止を求める対応を県・自治体に働きかけ、中止さる運動を市民団体や革新団体と連携して立ち上がる必要があるのではないか?

 何と言っても重要なのが広島のマスコミの対応だろう。
関口記者が指摘する米軍や政府の施策に敏感に反応した情報を的確に提供しているか?

 米国新大統領オバマのテロ対策はアフガン中心に移行しそうだ。強大な産軍複合体が支配してきた日米安保体制の変革は簡単ではない。それだけに、憲法9条改正の流れに歯止めをかける役割は被爆地広島にも改めて大きく圧し掛かってくる…。新しい年の課題だ。
関口記者の講演から改めて強く感じた。

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コメント

大和ミュージアム、僕もまだ見に行ってませんが、戦争の回顧や自衛隊の武力を誇示する施設かどうか、実際に見に行ってみられてはいかが? 百聞は一見にしかず、ブログで憶測を言っていても仕方ないですよ。あの施設に言った人たちからの感想で、日本の戦前への回帰を憂う感想を僕は一度も聞いたことがありません。それから、佐世保基地に入港した米艦船の艦長が平和公園に花輪を捧げた際、被爆者団体がそれをもぎ取って足で踏みつけにしたことがあったそうです。いつの記事かわかりませんが、醜い人々だと思います。平和主義とはほど遠い。

投稿: エストウォルド | 2009年1月10日 (土) 04時45分

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