甘利明行政改革担当相は23日、内閣府で人事院の谷公士総裁と会談し、中央省庁の幹部人事を一元管理する新設の「内閣人事局」(仮称)に人事院の企画立案部門などの移管に応じるよう求めたが、谷氏は難色を示した。
人事院は「中立公正の第三者機関」の立場を大義名分に掲げて他省庁との差別化を図り、抵抗姿勢を崩していない。政府は月内に内閣人事局の制度設計を含む公務員制度改革全体の工程表を策定する方針で、甘利氏は人事院への攻勢を強める考えだ。
甘利氏は会談前、「人事院は一番の抵抗勢力だ」と声を荒らげ、強い姿勢で臨む考えを強調したが、谷氏の頑強な抵抗にあい、協議は平行線に終わった。
谷氏はこの後、記者団に「(甘利氏の提案は)公務員制度改革基本法の範囲を超えている。基本的には難しい」と反発すれば、甘利氏は「100年ぶりの改革の本質を理解していない。人事院の協力がないとすべてが瓦解する」と批判した。
会談で甘利氏は、昨年11月に公務員制度改革推進本部の顧問会議(座長・御手洗冨士夫日本経団連会長)がまとめた報告書をもとに、人事院の機能のうち(1)省庁別に給与水準別の職員数を定めた級別定数の管理(2)職員の任用、研修、試験に関する企画立案−を内閣人事局に移管し、懲戒、分限などで人事院が規則を定める際には事前に内閣人事局が意見を言える仕組みを作ることを求めた。
これに対し、人事院は(1)公務員の労働基本権が制約されている現状では使用者が給与を決めることになる(2)政府の機関に移すと公務員の中立・公正性を定めた憲法15条に反する−などと反発、回答期限を明示しなかった。甘利氏は人事院の同意が得られなくても、政治決断で移管を工程表に盛り込む意向だ。
甘利氏は会談に先立つ23日午前には、麻生太郎首相に事務レベルでの交渉状況を報告。その後の記者会見で「首相からは『全面支持する。毅然とした姿勢で交渉にあたってほしい』と指示を受けた」と述べた。河村建夫官房長官も同日午後の記者会見で「これは人事院解体論ではない」と人事院側に理解を求めた。