生まれ育った千葉、学生時代に過ごした東京、取材で歩いた兵庫、三重、京都。どこに行っても、みんな自分たちが暮らす土地に愛着を持っていた。気候、住民気質、名産品……。住民が誇りを持つのはもっともだった▼だが、どの土地でも「ここが日本の中心だ」と主張する表現に出合った。「日本のへそ」「かつて都があった」などなど。郷土愛が募るあまり、よそ者をバカにする人もいて、そのたびに「またか」とがっかりした▼すべての面で優れている土地などないし、仮にあったとしても、住民が威張る必要はない。「地元への誇り」が「地元以外へのべっ視」につながっては、美しい郷土愛も台無しだろう。【熊谷豪】
毎日新聞 2009年1月23日 地方版