12日夜、東京のあるホテルで開かれた温家宝中国首相歓迎パーティー。
歓迎辞のため壇上に上がった安倍晋三日本首相は「(この日午前の)温首相の国会演説は歴史に残る立派な演説だった」と称賛した。「私が演説するときは与党議員たちしか拍手しないのに今日の温首相には(与・野党関係なく)何回も大きな拍手が起こった。正直、非常にうらやましい」という言葉も付け加えた。
招請国の立場として相手をのせる外交的手段だが側近たちによると安倍首相は実際「(歴史問題に対して)これまで日本がした反省と謝罪を積極的に評価する」という温首相の演説部分に非常に満足したという。
しかし温首相の訪日期間、いくつかの「リップサービス」が安倍首相を喜ばせたことを除いて、日本は終始、中国に引っぱられた。一言で温家宝と中国政府の老獪な「外交術」に引っぱられて一喜一悲するのに忙しかった。
まさにこの日の温首相の国会演説文がそうだった。日本政府は今月初めから中国側に「(草稿を)温首相訪日前に見せてほしい」と要求した。しかし、中国側は「両国首脳会談の内容を見て最終的に調整する。直前で直すかもしれない」として拒否した。首脳会談を自分たちのペースで引っ張っていく作戦だった。そして結局11日の首脳会談で、安倍首相から「日本は台湾の独立を支持しない」という発言を得た。これを確認した中国が国会演説文草稿を佐々江賢一郎アジア大洋洲局長に初めて伝えたのが11日夕方だった。
やや遅れて手にした草稿を見た日本が「拉致問題を少しでも取り上げた方がよかったのではないか」「(日本側に)謝々(ありがとうございます)という言葉を入れたらどうか」と打診したが「文言1つ直すことができなかった」(外務省幹部)という。温首相側は「6カ国協議の議長国としてリーダーシップを発揮しなければならないだけに、会談に影響を及ぼす発言は国会演説ではしない」と静かに返答したという。ただ、温首相はこの代わり日本政府が内心懸念していた「靖国神社」「従軍慰安婦」問題を取り上げず、日本側を安心させた。強弱の調節にも気を使ったのだ。温首相はまた演説の中で原稿にあった「中国人民は、日本人民が平和発展の道を歩いて行くことを支持する」という内容の一段落を抜いて読んだ。日本の議員たちの間には「わざと抜いたのではないか」と憶測も飛んだ。後で中国外交部が「その直前にあまりに拍手が大きく沸き起こったので、うっかり読み飛ばしてしまった」と説明すると、日本政府は安堵のため息をついた。
しかしそれもつかの間。温首相は演説後、天皇に会った席で「来年の北京五輪開会式には中国を訪問してほしい」という提案をし、日本政府をまた驚かせた。一言の事前調整もなかったというのが外務省消息筋の話だ。これは天皇の訪中を通じて日本首相の靖国神社参拝に完全に楔をさそうとする中国の計算された発言だという評価だ。それにもかかわらず日本の政界やメディアは「今回の温首相の訪日で、中国は歴史問題についてはやんわりと触れたにとどまった」としている。しかし、客観的に見た場合、中国の立場は今回もまったく揺らぐことはなかった。むしろ温家宝というリーダーのリーダーシップが際立った。温首相が再三強調した「(反省と謝罪を)実在的行動に移す時」という部分が今回の訪日の「核心」だったことに、日本がわざわざ苦労してそむいているのではないかと感じる。