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2009年1月23日 (金)

不正コピー問題の意外な解決策

昨日「オンライン出版本を買ってみて」というエントリをアップし、オンライン電子出版の問題点(不正コピー防止のプロテクトによって、かえって本としては不便になる問題)について書いたところ、編集者のMさんという方からメールを戴きました。Mさん、ありがとうございました。

メールには、アメリカのプラグマティック・ブックシェルフ(Pragmatic Bookshelf)社という技術系出版社の試みについて、たいへん興味深い事例が書かれてありました。

http://www.pragprog.com/
↑The Pragmatic Bookshelf

俺は英語が苦手なので、Mさんの解説をもとにざっと読んだだけなんですが、それでもこの会社がかなりユニークな試みをしていることはわかりました。

まず本の購買ページを見ると、プルダウン・メニューが「PDF+ PaperBook」になっており、ほかにpdfファイルオンリーとPaperbookオンリーが選べるようになっています。つまり、電子ファイルと紙の本のどちらかひとつ、または両方を同時に購入できるようになっているのです。

 さらにMさんの説明で面白いと思ったのは、この会社がダウンロード販売しているデータは普通のPDFファイルで、一切のプロテクトをかけておらずコピーも自由なのだが、その代わり

全ページに購入したユーザー名が入る

仕様になっているのだそうで、もし不正なコピーがネットに流出したら、即、誰に販売したデータなのかがわかるようになっているのだそうです。

なるほど、この方法があったのか、と目から鱗が落ちる思いがしました。俺はプログラムの知識が乏しいので、専門家であれば名前くらい簡単に外せるのかもしれないですが、たぶん全ページにわたって外すには単純に手間がかかるような仕掛けになっているんじゃないでしょうか。ここはプログラム関係の書籍も出している版元なので、当然、そのへんの問題は考えたうえでのことだと思います。

かりに名前外しが可能だとしても、海賊版を出そうという不心得者には、「あなたの名前をこちらは把握していますよ」という姿勢をそれとなく示すことで、かなりの抑止効果がありそうな気がします。これは、ユーザー名を逐一把握できるダウンロード販売にして、初めて可能となる「心理的プロテクト」ではないでしょうか。

それでいて、個人使用のためのコピーは可能なのですから、俺が前エントリで呈示した疑問はほとんど解消してしまいます。同時に「紙の本」も出すというのもポイントが高いですね。紙の本と電子出版では、メリット・デメリットが相補関係にあると俺は書きましたが、まさにこれは、最初から双方のいいとこ取りをしている出版形態といえますね。

この出版社は、他にも「著者と版元で利益を折半する印税率」など、かなりユニークな試みをしているようです。

あと、ミクシイの俺のページでもこの話題で盛り上がっていて、シリーズで数十巻になるようなマンガは、部屋面積の都合でなかなか手が出なかったが、電子出版になってはじめて『サイクル野郎』を全巻購入できた、という声もありました。『サイクル野郎』というところで年齢がバレてしまいますけど。

なるほど、『ゴルゴ13』や『こち亀』を全巻購入しようとしても、麻生太郎さんほどのお屋敷住まいでなければ現実的には難しいものがありましたが、オンライン電子出版なら可能になりますね。ハードディスクは今や激安の時代になりましたし。

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