【エルサレム=村上伸一】イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区ガザから地上部隊の撤退を完了した。先月27日からの過去最大規模の空爆とその後の地上侵攻による攻撃は、ひとまず終了した。だが、境界周辺への部隊配備は続け、ガザからの攻撃にすぐ反撃する態勢を取っている。
イスラエル軍報道官は21日、「今朝、最後の兵士たちがガザを離れた」と語った。頼りとする米国を意識し、20日のオバマ大統領の就任式までに撤退を完了するといわれていたが、同日に小規模な攻撃を受けたため遅くなった。
同軍が18日に「一方的攻撃停止」を始めたのに対し、ガザを支配するイスラム過激派ハマスも同日、「即時停戦」を発表したが、「1週間以内の撤退」を条件としていた。イスラエル軍が事実上応じたことで、双方の「停戦」が延びる可能性が高まった。
一連の攻撃でガザの死者は1300人を超えた。半数が巻き添えになった市民と見られている。
撤退は、当初の予想を上回る早さで行われた。発足直後の米新政権との間で懸案を抱えたくないとの配慮がうかがえる。
イスラエルは18日に一方的攻撃停止に踏み切った際、撤退期限を示さなかった。ハマスが18日、1週間以内の撤退を条件に即時停戦を発表した際も、反応しなかった。
だが、ハマスの要求した期限内の撤退がなければ、戦闘が再発する恐れは十分にあった。イスラエル軍の攻撃では多数の市民が死亡しており、戦闘再発は国際社会の中での同国のイメージをさらに悪化させかねない。そうなれば、オバマ新政権から停戦への圧力がかかるのは必至で、対米関係が新政権の出だしからつまずく可能性があった。
一方、ハマスも権力を維持するためには、過去最大規模の攻撃で破壊されたガザの再建を急がなければならない。パレスチナ自治政府中央統計局の試算では、建物やインフラの破壊による損害額は19億ドル(約1700億円)に上る。組織の立て直しも必要で、当面はそれらに集中できる平穏な時間が不可欠だ。