【エルサレム前田英司】イスラエル軍の執ようなガザ地区攻撃でイスラム原理主義組織ハマスは「大打撃」を受けたとされている。だが、暗殺を警戒し地下に潜っていたハマス最高幹部のハニヤ氏は18日、テレビに登場し高々と勝利宣言、健在ぶりをアピールした。ハマスはガザの再建復興を通じて支配体制を維持しようと、早くも動き始めた。
ロイター通信によると、「停戦」が実現した18日、ガザ市などの街角でハマス警官が早速、交通整理にあたり始めた。物資不足に伴う「便乗値上げ」の取り締まりで商店を回るハマス係官の姿も見られ、存在感を再び示そうと躍起だ。
ガザ住民の対ハマス感情は前例のない街の被害状況に揺れている。ハマスのロケット弾攻撃がイスラエルの報復を招いたとの不満は確かに募る。だが、従来ハマスが焦点を当ててきた福祉や教育面の「草の根支援」に対する支持は、そう簡単には薄れそうもない。
ハマスによる07年6月の武力制圧後、ガザの治安は著しく改善した。力による「恐怖支配」の側面がある一方、国際テロ組織アルカイダなどの流入を防いだとの見方も強い。イスラエル紙ハーレツは、ハマスを壊滅させた場合のガザが「第二のソマリアになるかもしれない」とすら分析していた。
ハマス幹部の一人は19日、イスラエル放送に「既にガザ全域への再展開を終えた」と誇示し、「テントを張ってガザ再建に取り組む」と強調した。ハマスと関係の深いイランやカタールなどが再建資金の提供準備を進めており、これらを基に復興をスムーズにし支持拡大につなげたい思惑だ。
イスラエル軍はハマス戦闘員約500人を殺害したと主張。これに対し、ハマス軍事部門は「失った戦闘員は48人だけ」と反論している。ハマスに詳しいイスラエル軍調査官のアビアド氏は「ハマスは消滅しない」と指摘し、ガザでのハマスの影響力が根強く続くとの見方を示している。
毎日新聞 2009年1月20日 東京朝刊