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世界不況:識者に聞く 「金融腐蝕列島」の作家・高杉良さん

 米国発の金融危機が実体経済を悪化させ、それがまた金融危機に拍車をかける「負のスパイラル」が止まらない。世界経済は、かつて日本が経験した「失われた10年」を上回る「15年不況」に突入した、という悲観論さえ聞こえる。世界不況はいつまで、どこまで続くのか。危機脱出の処方せんは--。各界の識者に聞いた。

 ◇まず雇用不安解消を

 --金融危機を端緒に、世界が同時不況に陥りつつあります。

 ◆米国流の市場原理主義の敗北だ。市場で神格化されていたグリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「100年に1度の危機」と認めたのは、ざんげのようなもの。欧米に比べ金融危機の影響が軽微なはずの日本で、景気悪化が雇用不安にまで発展するほど深刻になったのは、小泉改革で規制緩和をやり過ぎ、米国流の市場原理主義に同化してしまった結果だ。

 --日本は不況克服のため何をすべきですか。

 ◆かつて企業経営者には「雇用に手をつけたら、自らも去る」との矜持(きょうじ)があった。あらゆる経営努力を尽くして、最後の最後が雇用調整だった。製造業にも派遣制度を認めるなど小泉時代に導入された、行き過ぎた規制緩和や従業員より株主を優先する市場原理主義の結果、潤沢な内部留保を持つ企業まで景気が悪くなると真っ先に業績の調整弁として雇用削減に走るようになった。トヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する企業が雇用維持に踏ん張れずにどうするのか、との思いだ。

 --雇用不安解消が日本の不況克服のカギということですか。

 ◆派遣問題への対応など制度見直しも必要だがより重要なのは日本の企業経営者の意識だ。経営者は「多少給料を下げるかもしれないが、内部留保を取り崩してでも雇用は守る」との明確なメッセージを発するべきだ。

 従業員を大切にし、やる気を高め成長してきたのが本来の日本企業の強みだったはず。雇用不安を広げていては、消費者は車も電気製品も買う気にならない。日本経団連の御手洗冨士夫会長も遅きに失したとはいえ、最近、雇用最優先と強調し始めている。財界リーダーの腕の見せどころだ。

 --国の役割は何でしょうか。

 ◆米国では、ブッシュ政権までの格差社会を反省し、オバマ次期大統領が中産階級の底上げを宣言している。私は企業の中間管理職らミドルに焦点を当て、エールを送る小説を書いてきたが、日本再生に向けてミドルが本当にやる気を出せるかどうかだ。そのために国はどう政策を打ち、企業経営者がどう行動するのかが再生へのポイントだ。【聞き手・清水憲司】=随時掲載します

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 ■人物略歴

 ◇たかすぎ・りょう

 75年に作家デビュー。経済小説の第一人者として中間管理職らの葛藤(かっとう)を描いてきた。主著にコンビナート建設に燃える技術者を取り上げた「生命燃ゆ」、バブル崩壊後の銀行の裏側を描いた「金融腐蝕列島」など。69歳。

毎日新聞 2009年1月20日 東京朝刊

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