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“虐待”の娘連れ去り手配の母、オランダで親子同居

1月18日3時14分配信 読売新聞


“虐待”の娘連れ去り手配の母、オランダで親子同居

オランダの自宅で本を読む母娘=川口知也撮影

 ◆現地裁判所、同居認める◆

 長崎県大村市の児童養護施設に入所していた小学3年女児(9)がオランダに連れ去られた事件で、長崎県警から所在国外移送略取容疑で国際手配されている母親(32)が、オランダの裁判所から女児との同居を認められ、オランダ中部の都市で女児と一緒に暮らしていることが分かった。

 日本では女児は母親から虐待を受けたとして施設入所の強制措置が取られていた。母親は読売新聞の取材に応じ、女児を連れ去ったことを認めた上で「ずさんな調査で虐待があったとして引き離され、一緒に暮らすには連れ去るしかなかった」と話している。

 厚生労働省虐待防止対策室によると、施設入所の強制措置を受けた子どもが親から海外に連れ去られたケースについて「聞いたことがなく、どう対応すべきか分からない」としている。

 母親によると、現在、オランダのIT関連企業に勤務している。昨年10月24日、女児を施設近くで連れ去り、同26日に以前に働いたことがあったオランダに入国。その後、女児は日本側から連絡を受けた警察に一時保護された。母親については、同30日から現地の裁判所で虐待の有無などを調べる審判が行われた。

 審判の決定書によると、計4回にわたる審理で、「現在、虐待の兆候や心配はない」と判断。社会福祉士や医師らの母子に対する支援態勢が整っていることなどから、12月29日、「子どもの安全を保証することができる」などとして、母親と一緒に暮らすことを認める決定が出された。

 ◆母「ずさんな調査で引き離され、連れて行くしかなかった」◆

 母親は「日本では虐待しているとされたが、しつけだった。十分な調査をせず、審判でも訴えを聞き入れてもらえなかったので、一緒に連れて行くしかないと思った」と話した。帰国の意思はないという。虐待を巡る日本の行政の対応については、「親子がどうすれば一緒に暮らしていけるかではなく、親子を引き離すことが目的になっている」などと批判。女児も「お母さんと一緒に暮らした方が楽しい。施設には戻りたくない」と語った。

 母親は長崎県警から国際刑事警察機構を通じて国際手配されているが、日本とオランダには、国外に逃亡した容疑者を双方の国に引き渡す条約はない。県警捜査1課は「オランダ側の情報もなく、どうすることもできない」としている。

 一方、県長崎こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)は「虐待の事実は日本の審判で認められており、母親が連れ去ったのは犯罪行為。現在の親子の状態を調査する必要はあるが、対応は決まっていない」という。(川口知也)

 ◆日本の裁判所は「虐待」認定…連れ去りの経緯◆

 女児の母親ら4人が2008年10月24日、女児が入所していた児童養護施設近くで、女児を乗用車に乗せて連れ去ったとされる。長崎県警は同25日、女児の祖父ら3人を逮捕。福岡空港からオランダに渡った母親は国際手配された。

 女児の児童養護施設入所を巡る審判資料や長崎県警などによると、女児は07年8月、同県大村市内のコンビニ店に1人でいた際、2日前にも店内に長時間いたため不審に思った店長が大村署に通報。県長崎こども・女性・障害者支援センターに保護された。センターは、母親に尻をハンガーでたたかれるなどしているとして、女児の児童養護施設入所を申し立てる審判を長崎家裁大村支部に起こした。

 同支部は同年12月、「入所させた場合、母親との関係が断絶し、修復困難になる可能性が高く、入所が相当とまでは言えない」とセンターの申し立てを却下。しかし、抗告審の福岡高裁は08年5月、「暴行は相当期間、かなりの頻度で行われていると推認される。しつけの範囲を超え、精神的、身体的成長に深刻な悪影響を及ぼす恐れがある」と申し立てを認め、最高裁は同年10月14日、母親側の特別抗告を棄却した。

 ▼所在国外移送略取=刑法226条で規定。日本国外に移送する目的で人を略取した者は、2年以上の有期刑に処するとしている。

最終更新:1月18日3時14分

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