ロベルト・サビアーノのベストセラー小説『死都ゴモラ』と、同小説の映画化により、南イタリアのマフィアが再び世界の注目を浴びている。しかし、現実の世界は小説や映画よりはるかに残酷なようだ。小説の著者サビアーノは、ナポリのマフィアから死の脅迫状を送りつけられ、ボディーガードに1日中保護されるという生活を強いられている。そして、サッカー界にもマフィアの恐怖に脅えながら日々を送る選手がいる。
ここ数日間イタリアメディアは、ビジャレアルがウディネーゼのMFガエターノ・ダゴスティーノに興味を示していることを報道しているが、これにより同選手の過去が再び明るみに出た。現在26歳のダゴスティーノは、数カ月前にはマルチェロ・リッピ監督の手によりイタリア代表にも招集された将来有望な選手だが、彼の人生は、シチリアマフィアから死の脅迫を受けるほど衝撃的な過去を背負っている。
ガエターノ・ダゴスティーノの父、ジュゼッペ・ダゴスティーノは10件の殺人事件に関与したシチリアマフィアの元幹部だったが、自らの過去を後悔し、マフィアの世界から足を洗った。ジュゼッペは引退後、検察のマフィア対策部に協力したため、“裏切り者”としてかつての“同僚”に死の脅迫を受けていた。
当然、マフィアの脅迫はジュゼッペの息子ガエターノにも及んだ。シチリアのチームでプレーすることに対する危険を考慮し、ガエターノはローマへ渡った。しかし、ローマでもボディーガード付きで練習し、トラブルを避けるために非公開でトレーニングすることもしばしばあった。
この後ガエターノはメッシーナへの移籍によりシチリアへ戻ったが、当時のチームメートには、現在ジェノアでプレーするFWジュゼッペ・スクーリがいた。スクーリはカラブリア州のマフィアの幹部、ジュゼッペ・モラビトの孫だった。スクーリ自身は、ベローナ時代にU−21イタリア代表にも招集され、その後ユベントスへ移籍した経験を持つが、祖父ジュゼッペ・モラビトは、孫がベローナのホームスタジアムでプレーする日にスタンドに現れたところを警察に逮捕された。
しかし、両選手の人生は正反対の道を歩むことになる。マフィアを引退した元幹部の孫ダゴスティーノはウディネーゼで成功し、ビジャレアルとユベントスにアプローチされる一方で、スクーリはジェノア移籍後、カラブリア州にあるブルッツァーノ・ゼッフィーリオ村の村長選挙で、現役村長が再選されるよう村民を脅迫した罪に問われている。また、過去には、対メッシーナ戦で八百長試合を行ったとも報道されている。
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[ スポーツナビ 2009年1月18日 12:38 ]