●更新日 01/19●


俺の屍を越えてゆけ 〜治験。


治験。
製薬会社などが開発した医薬品などの販売承認を得るために行われる臨床試験のことである。
中でも「トマリ」と称されるものではその報酬が10万円を超えることもあるため、その倍率は20倍以上ともいわれる狭き門である。例えば、田舎の貧しい農家などでは、一家で応募してくることもあるらしい。ひとによっては生活の糧になっていることもあるようだ。

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製薬会社などが何年も研究開発を重ねたものにおいて実施するため、副作用等の心配は殆どないとされているが、中には人生を変えてしまうほどの副作用がでてしまうこともまれにある。

今回はある大学生が探偵ファイルに寄稿してくれたとある治験の実体験をお伝えする。


肥満への注目が高まる昨今、男性女性問わず少しでも痩せたいと思う人も多いはず。
そんな中、クローン技術を応用した成功率98.7%という夢のような痩身薬の発売が日本で解禁されました。

製品名 アンチゴルデット

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当時、都内の私立大学に通う大学生のAさんは、生活費のたしにと、ある被験薬の治験に応募しました。それが上記製品。治験当日。彼は「誓約書」なるものに署名を行い、処方箋を渡されました。その間わずか10分。

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風邪薬を処方してもらうよりも、ずっと簡単な手続きである。


誓約書の書されていた契約内容は「治験期間は2週間。一日に2リットル以上の水を必ず飲むこと。3食提供。一日に2回被験薬を飲むこと。それ以外は自由時間。治験結果によって如何なる時由が発生してもその責任は本人に帰属する」というもの。

さて、該当の被験薬はクローン技術の応用において、体質変換を行い95%以上と殆どのヒトを痩せさせることができるというのだが、本当にそんなにうまい話ばかりなのだろうか……?


その裏には恐ろしい副作用が隠されていた!


始まりは、治験当日の夜。
定期的な体重測定において、まず異変があった。彼の治験前の体重は68キロ。170cmという身長を考えればそれほどの肥満というわけでもない。が、治験日当日の夜。彼の体重は3キロも落ちていた。

彼は、凄いなこれ、一日で3キロも落ちちゃったよ、こんなことってあるんだな、と思ったという。しかし、すぐにその思いを改めることとなる。

翌日以降も彼の体重はみるみる落ち続け、7日後には47キロに。なんと一週間でマイナス21キロ減である。ここでドクターストップが入り、治験は強制終了させられた。

彼はいう。
別に普通に生活してただけでした。部屋にはテレビも漫画もあって、3食ご飯も出たし、おかわりも自由だった。ただ普通に生活していただけなんです。それなのに…

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報酬で25万円もらいました。一週間、3食食べてごろごろしてただけで貰えるという額にしては相当な額だと思います。でも、ここまで体重が減ってしまうなんて…最初に説明はあったんですけど、まさか、1週間で20キロ以上も体重が落ちるなんて信じれるはずないじゃないですか…。あのまま続けていたら死んでましたよ。もう二度と治験なんてやらないです。



治験は、そのリスクを覚悟すれば、怠け者にとっては最適の副業なのかもしれない。が、「ヒト」に対して初めて被験薬を用いる試験であるため、安全性が必ずしも保証されているわけではないことを忘れてはいけない。
また、該当の被験薬であるが、通常これほど治験者に異常がでてしまう(1週間で20キロ以上の体重減少)となると、発売認可は下りていないはずである。にも関わらず、発売解禁されているということは、彼のような症例報告をしていない可能性が高い。

これを読んでいる読者の方々は、




痩せるためなら死んでもいい

……とならないよう、充分気を付けていただきたいところだ。







デブをやめますか?人間やめますか?




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