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日本郵政が全国にもつ宿泊施設「かんぽの宿」をオリックス不動産へ譲渡する話に対し、許認可権をもつ鳩山総務相が「待った」をかけている。
日本郵政の西川善文社長から説明を受けたが、鳩山氏は「納得できない」という。だが、理由が不明確で納得できないのは、鳩山氏の「待った」の方ではないのか。許認可という強権を使い、すでに終わった入札結果を白紙に戻そうというのなら、その根拠を明示する責任はまず鳩山氏にある。
かんぽの宿は年間200万人ほどの利用があるものの、赤字続きだ。郵政民営化から5年以内に譲渡するか廃止することになっていた。
日本郵政は前任の増田総務相が認可した08年度の事業計画にかんぽの宿の譲渡を盛り込み、昨年4月から入札手続きに入った。27社が応札し、2度の入札でオリックスに決まった。
全国の宿70施設と社宅9カ所を一括して約109億円で売却する。資産の帳簿上の値打ちは141億円だが、借金を差し引いた純資産は93億円。落札価格は、これを16億円ほど上回る。
鳩山氏が問題だと指摘するのは次の3点だ。なぜ不動産価格が下がるいま売るのか。なぜ一括売却なのか。なぜ規制改革・民間開放推進会議の議長を長く務め、郵政民営化を支持していた宮内義彦氏が率いるオリックスに売るのか。「国民が“出来レース”と見る可能性がある」として、譲渡に必要な会社分割を認可しないという。
これに対して西川社長が説明した内容は、しごくもっともに思える。
赤字が毎年40億〜50億円あり、地価が急上昇しない限り、早く売る方が有利だ。一括売却でないと不採算施設が売れ残り、従業員の雇用が守れない。全国ネットとした方が価値も上がる。最高額で落札し、雇用を守る姿勢が最も明確だったのがオリックスだ――。
鳩山氏は譲渡価格109億円が適切か総務省に調査させるという。だが調査する前から「納得する可能性は限りなくゼロに近い」とも発言している。
これはとうてい納得できない。明治時代の官業払い下げならいざしらず、競争入札を経た結果に対し、さしたる根拠も示さずに許認可権を振り回すのでは、不当な政治介入だと批判されても抗弁できまい。
宮内氏は規制緩和や民営化を推進してきた。官僚任せでは構造改革が進まないため、当時の政権が要請したものだ。過去の経歴や言動を後になってあげつらうのでは、政府に協力する民間人はいなくなってしまう。
自民党内では、郵政民営化の見直しの動きが続いている。鳩山氏はこれとの関連の有無について言及していないが、もしも「待った」の真意が民営化策の見直しにあるのなら、正面から堂々とそちらの主張をするべきだ。
北朝鮮の核問題は、今週発足する米国のオバマ新政権にとって最も厄介な外交課題の一つに違いない。
はたして北朝鮮には核を捨てる意思が本当にあるのか。ライス国務長官は、北朝鮮が兵器級の高濃縮ウランを入手ずみという見方を示した。
その北朝鮮は最近の外務省談話で、米国との関係正常化がない限り「先に核兵器を放棄することはない」と言明した。米新政権に向けてさっそく牽制(けんせい)を始めたということだろう。
ブッシュ政権の8年を振り返ってみる。北朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」と声高に非難はしたが、アフガニスタンとイラクでの戦争に足を取られたこともあり、発足後の6年間は核問題に対する実質的な取り組みはほとんどなかった。
その結果が北朝鮮による衝撃的な核実験だ。これを機に米国は北朝鮮との妥協に走り、核計画のずさんな申告を許してしまった。申告に対する検証の問題やテロ支援国家指定の解除をめぐって、日本や韓国との不協和音が生じたことも記憶に新しい。
北朝鮮が、体制維持のためのよりどころでもある核をやすやすと捨てることは考えにくい。
だが、核武装した北朝鮮との共存という状態は、日本はもちろんのこと、米国や韓国、中国、ロシアにとって容認できるものではない。米新政権の発足を機に、核を一日でも早く放棄させるための国際的な外交努力を改めて活性化させねばならない。
オバマ政権に期待したいのは、ブッシュ時代を教訓に、一貫した姿勢で臨むことだ。国務長官に指名されたクリントン氏は、現在の6者協議について「北朝鮮に圧力を行使でき、米朝協議の機会も提供する」として、積極的に生かしていく姿勢を示している。
単独行動ではなく国際協調による取り組み、硬軟を織り交ぜた「スマートパワー」のねばり強い外交を北朝鮮に対して貫いてほしい。日韓や中ロとの協調を仕切り直しして、対話と圧力の効果を高めてもらいたい。
北朝鮮との交渉は核施設を使えなくする無能力化の段階で停滞している。だがプルトニウムの増産は抑えることができている。これを足場にまず、検証方法の合意、無能力化と見返り支援の完了へ進む必要がある。弾道ミサイル問題にも対処せねばならない。
新政権には日本人拉致問題にも積極的に協力してもらいたい。北朝鮮は日米の離間を図ろうとするだろうが、拉致も核もミサイルも、という包括的な前進へ日米の協調を強めたい。
北朝鮮も新政権の出方を注視している。新年恒例の主要3紙共同社説に、恒例の対米批判が全くなかった。
難題打開への道筋をつけることができるかどうか。正念場の年になる。