県警は16日、県内で昨年1年間に発生した振り込め詐欺の被害状況を発表した。県警が認知した件数が1988件(前年比70%増)、被害総額が約31億5700万円(同32%増)に上り、大規模な取り締まりにもかかわらずいずれも過去最悪となった。昨年前半から急増した還付金詐欺が全体を押し上げたとみられ、小包や私書箱などを使った新たな手口も確認されていることから、県警は警戒を強めている。【吉住遊】
県警振り込め詐欺撲滅対策推進本部によると、被害の内訳は▽オレオレ詐欺1202件24億1000万円▽還付金詐欺516件5億円▽架空請求詐欺130件1億4000万円▽融資保証詐欺140件1億円。郵便局が扱う送料一律の小包などで現金を私書箱に送らせる手口を県内でも84件(同60件増)確認した。犯行グループが直接現金をだまし取る「手交型」が112件(同85件増)と急増し、今年に入ってからも15日までに認知した17件の半数が「手交型」という。
また、現金を振り込ませる口実は、「会社の金の使い込み」や「借金の肩代わり」などの金銭トラブルが7割を占めた。この他に「交通事故の補償金」や「妊娠の中絶費用」などもあったという。
被害の増加を受け、県警は昨年6月に同本部を設けて取り締まりを強化。昨年1年間で計51人(同38人増)を詐欺容疑などで検挙したほか、振込先に使われる口座を不正に開設した疑いなどでも162人を検挙した。しかし、発生の増加に追いつかず、認知件数に対する検挙率は37・5%(同2・8%減)に低迷した。
県警はATM(現金自動受払機)への警察官の配置や注意を呼び掛けるチラシ配布などの対策を実施してきたが、認知件数は東京都に次いで全国2番目の多さとなった。全国的には被害が減少しており、県警捜査幹部は「県内で卑劣な犯罪が依然として増えていることは残念。違法口座の摘発を含め、検挙に全力を挙げていきたい」としている。
毎日新聞 2009年1月17日 地方版