「いのちを守るための緊急アピール」発表
社会司教委員会では、昨日、「いのちを守るための緊急アピール」を発表しました(全文は中央協議会のHPのこちらへどうぞ)。社会司教委員会とは、「日本のカトリック教会として、時のしるしを見極め、社会の中にあって予言的な役割を果たすこと、また社会の非福音的な事象に対して、教会の内外に福音の立場を明示し、社会の福音化に寄与することを目指」すために設けられている委員会です(中央協のHPより)。社会系の各委員会の担当として司教協議会会長から任命されている司教さんたちがメンバーとなっています。私もカリタスジャパンの責任司教として任命されていますので、担当司教の幸田司教とともに、社会司教委員会のメンバーとなっています。(なお一部ドラフト段階の文面が出回っているようですが、正式な文章は中央協のHPを参照下さい)
アピールの一番訴えたい事は、次の一文に述べられています。
「この緊急事態にあたり、日本カトリック司教協議会社会司教委員会は、多くの人がいのちの危機に直面しているということを訴え、今、特にその最悪の結果である「路上死」と「自死」を出さないためにわたしたちに何ができるか、教区・小教区・修道会・信徒の団体で考えていただきたくこのアピールを出すことにしました」
このアピールは決して、教会として何もしていないからこれから新しく何かを開始しなくてはならない、というスタンスではありません。もちろん必要なところでは新しく始めなくてはならないでしょうが、すでにこういった問題に対応して活動を始めた方々や、これまで何十年もの長い間にさまざまな支援活動を行ってきた方々の働きに対して、協力と支援を強めていこうと(そして感謝も)呼びかけるものです。
問題は突発的に発生したものではなく、長年の歴史の中で積み上げられてきたものですから、おいそれと解決が見いだせるものではないのでしょうけれど、まず小さな問題に一つ一つ取り組んでいくところから、全体へと波及していく事を望みたいという姿勢です。全体としての大転換は政治にしかその力がないのかもしれません。宗教としては個々の方々の心の転換から入り込んで行ければ、とも思います。
とはいえ、「 もし、兄弟あるいは姉妹が、着る物もなく、その日の食べ物にも事欠いているとき、あなたがたのだれかが、彼らに、『安心して行きなさい。温まりなさい。満腹するまで食べなさい』と言うだけで、体に必要なものを何一つ与えないなら、何の役に立つでしょう。信仰もこれと同じです。行いが伴わないなら、信仰はそれだけでは死んだものです(ヤコブ2章15節から17節)」と聖書にあるとおり、目前の事態に具体的に行動しない限りは意味がありません。自分にできる範囲をわきまえて、取り組みを考えていきたいと思います。
それから、カリタスジャパンの社会福祉部門で取り組んでいる「自死」の問題についても、経済情勢と切り離せいない相関関係があるという指摘もありますから、これについてもこれまでの啓発への取り組みを強めていきたいと思います。
いずれにしても問題の現実とその背景を知らない限りはふさわしい対応をとる事はできないのですから、常に学ぶ姿勢も持ちたいと思います。
アピールにもあるとおり、今後カリタスジャパンでは募金を呼びかけ、さまざまな支援活動に対する援助を行っていきたいと考えていますので、今週中にも具体策を検討して参ります。
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