ノリコちゃんの家族の保護のために

2009-01-06 15:54:53 | 弁護士から
                   2009年1月6日 弁護士 渡辺彰悟
 

1 不法入国の背景
 
この間,この問題を訴える中で,ノリコちゃんは日本で教育を受けてもらいたいけれども,両親は不法入国者であって,これは帰国してもらうしかないという意見も聞きました。
その中で,率直に不法入国をした経緯・背景も問われることがありました。

 私からフィリピンの状況に詳しい人に問い合わせたところ,以下の様な回答を得ました。
 
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 フィリピンは発展途上国といわれるように,貧しい国の一つに位置づけられています。

失業率が約10%と高く,また貧困率(Poverty Incidence)も28.4%(2000年,フィリピン政府発表。

但し,都市部では15%である一方,農村部では41.4%)と高いフィリピンは,マルコス時代からの国策で海外出稼ぎを積極的に奨励してきました。

フィリピン人にとっての出稼ぎはいわゆる日常化しており,出稼ぎ者からの外貨送金で国に残る家族や親戚たちの生活が支えられているのが現状です。

例えば,2003年には海外送金の規模は76億4000万ドルと過去最高になり,この額はGDP(国内総生産)の約1割に相当します。

いわば,フィリピン人にとって貧困から脱却するための方法の一つが海外出稼ぎであるといえます。


出稼ぎ者の中には,
1) 出稼ぎ国で市民権を得て家族などを呼び寄せ,完全に移住しているもの,
2) 雇用契約期間があり,契約期間終了とともに帰国することを繰り返すもの,
3) 正規の手続きを経ず出稼ぎ国に入国するもの,
がいるのだと思われます。


 日本に出稼ぎのために入国するものの多くは,
2)または3)の手続きを経て日本へ入国しています。
2)または3)の手続きを経る者たちは,エイジェンシーやブローカーなどを通じた代理申請によって査証を得て入国するケースが多く,個人での査証申請によって就労可能な査証を得ることはあまりないように思います。


 なぜ,個人での正規の申請を経て入国することができないのか。

 短期滞在(観光や親族訪問)であれば,日本からの身元保証人などがいる場合,個人申請でも入国することは可能です。ただ,個人が就労可能な長期の在留資格を得て入国することは,非常に困難なことです。それは第一に,出稼ぎ国の会社や雇用先からの正規の招聘状などが必要であり,そうしたことが可能なのは,優秀な技能や技術を持つ一部のエリートたちに限られます。

 多くの一般市民は大学を卒業してもコネなどがなければよい仕事をみつけることができません。1980年代から増加してきた日本への興行ビザでのフィリピン人女性の入国は,決して個人申請ではなく,リクルーターやエイジェンシー,ブローカーやプロモータなど,彼女たちの出稼ぎを利用しお金をもうける仲介業者の存在があります。その仲介業者の中には,悪徳業者もあり,やくざなどの暴力団関係の業者も少なくありません。

 他方,海外へ出稼ぎに行く人たちがリクルーターやブローカの悪質性まで判断することは非常に困難です。彼女たちはリクルーター,エイジェンシーまたは,知り合いの親戚や友人などを通じて,日本への出稼ぎを勧められますが,その時点で正規の手続きではないとはまったく知らされません。誘いを受けた多くの女性たちは貧しい家族を支えるため出稼ぎを決心します。リクルーターやエイジェンシーは彼女たちに対して,まとまったお金を払う必要はなく,日本で働いた中からその費用は払えることや,引いたとしても彼女たちのお給料は3ヶ月で500ドルはもらえることなどの話を持ちかけます。

 500ドルという金額が日本で3ヶ月働いていかに低賃金だったとしても,彼女たちがフィリピンでどんなに働いてもこれだけの金額はもらえないので,彼女たちにとってはとてもいい話です。興行ビザでの日本への入国前に彼女たちは一定の期間,歌や踊りのレッスンを行いプロとしての意識を培います。いつ来日するのかは,エイジェンシーやプロモータ任せです。パスポートの申請も査証申請も同じようにエイジェンシーやプロモータに任せます。


次に,彼女たちの違法性に関しての認識について感じたことを述べます。


ほとんどのケースで,フィリピンを経つ日または直前にブローカーなどから本人のパスポートを渡され,その時点で,自分の名前が違うことや生年月日が違うことなどに気づきます。
しかし,たとえその時点で苦情を言っても,同じように名前や生年月日の違う旅券を渡された仲間たちと一緒がいること,ブローカーからは「契約期限内に戻ってくるのだからまったく問題ない」などと説明を受け,また,親戚家族からは日本行きを歓迎され送迎会まで開いて送り出してくれたために今更キャンセルはできないこと,ブローカーにお願いしたことによる借金の返済の困難性,など諸々のことを瞬時にして考え,日本へ行くことを決心します。この瞬時に「偽名での入国が日本の法律を犯すことになる=犯罪」ということについてどれだけの人が深刻なことだと判断できるでしょうか。ほとんどいないと思われます。

 ほとんどのケースで日本へ着くと空港でブローカーなどからパスポートを取り上げられています。基本的にパスポートという自分のIDはその本人が携帯する義務があること,それを取り上げられることが違法なのだと判断できる人,さらに,それに対して抗議できた人もほとんどいないと思われます。なぜなら,本人たちはブローカーなどにその身分も存在も束縛されている状態のために彼らの指示に従わないことは許されないからです。

 また2度3度偽名のパスポートで入国し,日本で働きお金を稼ぎフィリピンへ帰国した経験を持つものは,違法性への認識が薄れ,ブローカーなどに任せておけば,偽名のパスポートを使っても日本で捕まることはないから大丈夫だと安易に考え,不法入国を繰り返すものもいます。

 もちろん,彼女たちの中には日本で束縛されながら働く中で,ブローカーの話が聞かされていた事実とは異なることが徐々に分かってきて,勇気を持って逃げ出すものもいます。
たとえば,
1)仕事の内容が違う(歌や踊りだけでなく買春や裸になることを強要された),
2)給料の未払い,
3)雇用主からの暴力(性的暴力を含む)などが多くの原因です。


 しかしながら,逃げ出した彼女たちはその後,日本にいる友人や親戚,恋人を頼っての暮らしが始まりますが,自分のパスポートを持っておらず,在留期限がいつなのかさえ分からないものもおり,多くのものは在留期限を越えて日本で働き続けることを決心します。送り出してくれた家族や親戚のこと,貧しい家族のこと,帰国しても仕事がないこと,などを考えると,ある程度まとまったお金を稼がずに帰国することはできません。そして,多くのものが,オーバーステイであることや不法入国した事実を認識をしていますが,「捕まるまで働き続けよう」と決心するのです。

 彼女たちの不法入国に至った原因が,不法入国と知りながら来日を決心した彼女たちにまったくないとはいえませんが,その背景には,彼女たち(弱い立場)の無知や貧困を利用した「業者」の存在があり,さらには,日本という先進国が「興行」という査証を利用して彼女たちの労働力を大量に受け入れたという事実があります。ゆえに,その違法性を一人ひとりの個人に押し付ける前に,違法へ至った個人の経緯や背景だけでなく,違法性へのアクセスが非常に容易な社会的要因や背景,さらにはフィリピンという国家の社会・経済的要因,また日本の国の海外出稼ぎ労働力受け入れ事情も十分に考慮に入れる必要があると考えます。

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さらに,父親,つまり男性についていえば,女性との最大な相違は,合法的に入国する手段がほとんどなかった,という点を指摘されました。つまり『日本では単純労働は認められていませんが,そうしたことを知識としてしっかり理解している男性たちはどれほどいたのか。そもそも,ブローカーは貧しくて海外出稼ぎに行きたい彼らの弱みを利用して,「任せておけばいい。心配するな。仕事はたくさんある,問題ない」と言って不法性にはまったく触れずに彼らを誘引し日本に連れてくる』ということです。

適法な手続によらず入国するに至った個人の経緯や背景だけでなく,そうしたことが容易に行われている社会的要因や背景,さらにはフィリピンという国家の社会・経済的要因,また日本の国の海外出稼ぎ労働力受け入れ事情も十分に考慮に入れる必要があるということも,彼らの問題を考察する際に考えるべき事情として入れてよいのではないかということです。
 
 そして,この外国人労働が日本において果たしてきた役割も正確に見る必要があると思います。
 私は,不法入国を問題にする必要がないとは言いません。しかし,本件を処理する際に,過去の個人の力ではどうにもならない事象を,その個人の責任に負わせようとすることによって,その以後のすべての状況を斟酌せず非人道的な結果を導くことはしたくないのです。不法入国をしたことの一事で,日本で生まれ育った中学生にもなるノリコちゃんの最善の利益を脅かし,そして一生懸命日本社会に溶け込んできたこの家族を見捨てる日本社会であってほしくないのです。



2 お願い


 再び,仮放免の出頭日が14日に迫ってきました。

 署名は継続され,前回と同数程度の署名が集まっていますし,現在も署名に関する問い合わせは続いています。


暉峻淑子著書の「豊かさの条件」(岩波新書)には次のような記述があります。
1997年8月6日,福岡県の小学校2年生の女の子が登校途中に行方不明になったときに,夜になっても行方のわからないその子を心配して同じ学校の父母や地域の人たち1000人余りが懐中電灯をもって学校の校庭いっぱいに集まり手分けして夜中遅くまで探したという話です。

「懐中電灯の光がゆらゆらと,まるで海のようにはるか彼方までひろがり,子どもを探してくれたその光景を,両親は,娘が他殺死体で見つかったあとも思い出しては,なぜか心が支えられたという。悲しみのどん底にあるとき,多くの人がその悲しみを共有してくれたことが,その後の人生を支えてくれたと,母親はのちのちまで語っている」(同書125頁)。

私はこの文章を以前キンマウンラ家族の保護を訴えるときに使いました。
今回もまったく同じ感覚を持ちます。
皆さんの署名のひとつひとつが,メッセージのひとつひとつが,ノリコちゃんとこの家族にとって懐中電灯の光なのだと思います。
この光はノリコちゃん家族を支えているし,そしてなによりも一番ノリコちゃんの心の傷を癒していると思います。

もっともっと署名だけではなく支援を広げることでこの懐中電灯の光を増やしたい。懐中電灯の光が増えることによって,法務大臣の心も溶かすことができると思うのです。皆さんの協力が必要です。

よろしくお願いします。

以上
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カルデロン一家への支援のお願い

2008-12-02 10:11:28 | 弁護士から
私は,この事件を担当してきた代理人として,この事件についての私なりの考え方を述べておきたいと思います。そして,皆様からの心からの支援をいただきたいとお願いをする次第です。(今回のこの取組みに対する消極的なご意見に対してもお答えをしたいと思い書いたものです。)


1 現在の状況


行政及び司法の判断はカルデロン家族に対して退去を命じています。
しかし,私は,この家族の中の特に子どもについて,子どもの権利条約3条の「最善の利益」に照らして,日本での教育の継続こそが必要であると考えてきましたし,その考えは現在も変わりません。
この主張が認められなかったことはそのとおりですし,彼ら家族に対する退去強制令書の効力を争う手段は存在しないことも事実です。

だからこそこの段階でお願いをしているのは,「法務大臣の裁量に基づく在留特別許可の付与」ということになります。


2 「法治主義」という言葉について

日本は「法治主義」国家なんだから帰ってもらうしかない,ということがよく言われます。

ただ,ここに言われる「法治」が,「法律」による支配のみを意味しているとすれば,その主張に対しては,日本における「法治」はあくまで,憲法・条約を含めた「法」によるものであることを私は訴えたいと思っています。だからこの家族のことを考えるときに,子どもの権利条約が定めている子ども権利に対する最大限の考慮が必要であるにもかかわらず,その考慮が充分になされた処分・判断であるのかとの疑問があります。

今回のケースを考えるときに,参考になる前例があります。
 
皆さんもご承知のキンマウンラ家族,ジラン家族,ムスタファ家族です。
 
これら家族にもすべて退去強制令書発付処分が出されていました。ただ,夫がA国の国籍国,妻子がBという国籍国であるため,退去強制の執行によって家族離散という問題が起きてしまうという事例でした。これら家族もすべて裁判では敗訴していました。これら事件が問題となったとき,今回と同じように法務大臣は「日本は法治主義国家だから,お帰り願うしかない」と当初コメントしていました。しかし,家族離散という状況が世論を動かし,多くの人たちの共感のもとに,最終的に法務大臣の在留特別許可の判断がなされました。

これら事例の結末は,入国管理局と裁判所の判断が国民によって支持されなかった端的な例として考えることができるのではないでしょうか。つまり,これらの事例は,もともと,条約に基づいて保護される「家族の統合」と「子ども最善の利益」の観点から保護されて良かった事案だったのです。ある行政判断の誤りがその後是正され,そしてそれが運用の基準となりうる一つの例であると思います。

また,今回と同様の事案について,これまでの入管と裁判所の判断が絶対的なものではないことは,過去の判決にもみられます。例えば平成15年9月19日の東京地裁判決では「(退去強制は)原告長女のこれまで築き上げてきた人格や価値観等を根底から覆すものというべきであり,それは本人の努力や周囲の協力等のみで克服しきれるものではないことが容易に推認される。…イランに帰国した場合には,在学を維持することにすら相当な困難が伴い,就職等に際しても,日本で培われた価値観がマイナスに作用することが十分に考えられる。・・・原告長女に生じる負担は想像を絶するものであり,これらの事態は,人道に反するものとの評価することも十分に可能である」という判断を下し,行政の判断を取消しました。この地裁判決はその後高裁で覆っていますが,裁判所の判断にも,このように「子どもの最善の利益」を考慮して行政の判断を覆している判決が存在するということであって,今の時点のカルデロン家族に対する行政と裁判所の判断が,長い目でみて絶対とはいえないということなのであります。

さらに,別の同様の事案(摘発時に子ども10歳のフィリピン人家族)において,東京高等裁判所は,行政処分が適法であるとしつつ,「日本での生活が継続するにつれて、国籍国であるフィリピンとの関係が希薄になり、フィリピンにおいて生活することが次第に困難になりつつあること、控訴人(子)の周りの関係者は、同人の希望をかなえてやりたいと強く嘆願していることなどが認められる以上の本件各裁決等の後の控訴人らを巡る事情にかんがみると、・・・控訴人(子)をフィリピンに強制送還することにより、同人に日本で教育を受ける機会を失わせ、将来の夢を断念させるのは見るに忍びないものがある。ついては、出入国管理行政の最高責任者である法務大臣におかれては、控訴人らについて当分の間退去強制令書の執行を停止して仮放免措置を継続した上で、再度の考案として在留特別許可の付与の可否についての恩恵的な措置及び児童の最善の利益の観点から検討されること当裁判所として期待したい」(東京高裁2007年9月27日付判決)と判決中で付言をしたことがあります。そして,入国管理局はこの付言を受け止めて,この家族に在留特別許可を付与しました。

 
3 カルデロン一家の在留を現時点で求める理由

なんといっても第一にのり子ちゃんの「最善の利益」です。

言語能力には,対人コミュニケーションのような比較的具体的な言語活動にかかわる「基本的対人伝達能力」(BICSという)という側面と,抽象思考が要求される認知活動と関連のある「認知・学習言語能力」(CALPという)という側面があり,この言語能力の2つの側面は,同時に発達するわけではなく,基本的対人伝達能力の方が認知・学習言語能力に先行するものといわれています。
 そしてここで重要なことは,二つの言語の習得開始が異なる場合,はじめに一つの言語の習得が先行しているため,二つの言語の基本的対人伝達能力間,また認知・学習言語能力間の時差・発達差は大きいものと推測されています。つまり,後から習得される言語での基本的対人伝達能力については,ごく短期間にその言語のモノリンガルの人と同じレベルに達するが,認知・学習言語能力については相当期間が必要であると考えられているのです。つまり,のり子ちゃんがタガログ語の環境のなかに放り込まれた場合,多くの困難を伴うことが言語学的にも予想されます。

早稲田大学大学院 日本語教育研究科の川上郁雄教授も,直接のり子ちゃんからの事情を聴取した上で以下のように述べています。

『人間としての成長過程にある子どもたちの言語発達、認知発達および学力発達を考えたとき、現在の言語学習環境が変化することが子どもの成長に多大な影響を及ぼすと言わざるを得ません。これまで順調に成長している以上、この環境の維持こそ求められるところです。・・・
人間としてこの地に生を受けたなら、どのような理由があるにせよ、持っている能力を発揮できるような環境に育つことは人間の権利であると考えられます。それは、国籍の有無に関わらず、何人にも保障され、尊重されるべき人間の権利であります』。

小学校高学年にもなれば様々な人格形成上重要な時期にさしかかっていく,そして言語能力も構築されていきます。のり子ちゃんは,まさにその時期にいます。この子どもを現在の教育環境,社会環境から切り離して,全く異なる言語的環境・社会的環境におくのは,この子どもにあまりにも大きな負担を強いることになります。実際に,タガログ語のできないのり子ちゃんがフィリピンに帰国すれば,小学校1年生に編入されることになり,一年生と机を並べて勉強をいちからやり直しということになります。このような状況に追い込むことはしたくありません。


4 親の不法入国の問題

のり子ちゃんの両親は確かに不法入国をしました。

しかし,その後15年以上の長きに渡り日本の社会の中で懸命に生き,そして子どもを育ててきました。父親であるアランさんは会社で信頼される人間であり,仲間に支えられ,そして職長として日本人の人たちに仕事を教えることのできる立場にある人です。

確かに,ご両親の入国時の行為は正しくなかった,これはそのとおりです。しかし,入国時の過ちのみによって,現在のこの局面で彼らを退去に追い込まなければならないほどのものでしょうか。日本社会の中で定住してきた彼らを日本社会から引き剥がすことは日本の社会にとって必要なこととは思えません。

非正規滞在者の資格を正規化するという方法はいろいろとあります。個別事案ごとに判断する手法を日本はとっていますが,諸外国には一定の基準を満たせば,在留資格の正規化を認めるというシステムを用意することもあります。例えば,「7年以上滞在している家族で子どものいる家族に在留資格を与える」というような基準を決めている国もあります。このように多くの場合に見られるのは,やはり子どもを抱えている家庭の保護です。そこに子どもの利益という観点があることはもちろんですが,それだけではなく,非正規滞在者の置かれている労働環境や社会環境の健全化ということが意識されています。長期に非正規滞在者が不健全な環境におかれていることを国が回避しようとする考えです。この考えには非正規滞在者であっても一人の人間であって,その人たちも人権の享有主体であるという考えが通っています。

このような考えを日本も取り入れていく時期に来ていると思うのです。


もちろん以上の考え方の前提には,家族全員の保護を求める考えがあります。のり子ちゃんだけを日本に残し,両親には帰国してもらうということも選択としてはありえます。イラン人家族について短大進学の決まった子どもだけに在留を認め,両親と他の子どもには退去を命じたということあったのは記憶に新しいところです。しかし,その判断の当否は別として,短大進学する年齢と中学1年ののり子ちゃんとでは事情が異なります。のり子ちゃんを日本で育ってもらうという決断をするのであれば,その両親の在留を認めるのは帰結といえるでしょう。


5 お願い

さまざまなメッセージをいただいています。署名は8000筆程に到達しています。この支援の輪をもっと広げたいと思います。その輪の広がりがのり子ちゃんとこの家族の保護につながります。

子どもたちは,学校や地域,自分をとりまく社会が自分を守ってくれる社会であると信じて暮らしています。のり子ちゃんもそうでしょう。そして,のり子ちゃんの友人・仲間も自分たちをとりまく大人たちの判断を見守っています。自分たちにとってかけがえのない友人のり子を自分たちの目の前から引き離そうとするのかどうなのか。のり子ちゃんや彼女をとりまく子どもたちの,地域・学校そして日本社会に対する信頼をそのまま維持したい,心からそう思います。そして願わくば,彼らの夢を日本という国が押し潰してしまうような結果にはしたくない,そう思っています。


皆様からの支援をよろしくお願いします。



弁護士 渡 邉 彰 悟
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