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ワクチン予防議連とアカデミアが連携
ワクチン制度改革に与党も支援
総理・閣僚級への政策提言に道
2009.1.14
ワクチン予防議連の坂口力会長(元厚生労働相・公明)、鴨下一郎会長代理(前環境相・自民党)と、厚生労働省「予防接種に関する検討会」の加藤達夫座長(国立成育医療センター総長)が7、8日に面談し、ワクチン制度改革に向けて、与党議員とアカデミアが共同歩調を取ることを確認した。これまでアカデミアは医療現場のニーズを厚労相あてに要望してきたが、厚労省内部の検討段階で暗礁に乗り上げることが多く、政策に反映されづらかった。議連では、「従来の政策決定プロセスだけでは世論の支持は得られない」と判断。アカデミアから総理や閣僚級に直接提言する機会を模索するなど、政治レベルの支援も必要との認識を確認し合った。省内の検討会見直しと合わせて、ワクチン行政の改革が加速しそうだ。
これまでアカデミアは、小児科関連学会・医会・協会・日医の政策提言を要望書にまとめ、厚労相に提出していた。だが、政策決定の過程で、予防接種法の規定や医療費問題、副反応事故の訴訟対策、行政のマンパワー不足といった障壁に突き当たることが多く、厚労行政をなかなか動かせなかった。その結果、日本のワクチン政策や感染症対策が遅れた。
今回、ワクチン予防議連が設立されたことで、アカデミアから総理や閣僚級に直接政策提言する道が開けてきた。日本の感染症対策がいかに遅れているか、どのような対策を講じれば問題を解消できるのかを具体的に指摘して、政治家の理解を得られれば、法改正さえ視野に入る。
加藤氏は鴨下議員との会談で、「日本は定期接種が少ない。水痘ワクチンをはじめ、承認後も任意接種のままになっているものが多い。また、予防接種法の見直しが5年に一度しか行われないため、医学的見地から定期接種に含めようとしても迅速に対応できない」などと法制度上の問題点を例示。これに対して鴨下議員も、「まさにそのような懸案事項を議連に持ち込んでほしい」と応じ、政治決着の必要性も視野に入れていることを示唆した。
一方、ワクチン制度改革の具体案については、厚労省も検討を始めている。昨年12月26日の予防接種に関する検討会で、加藤座長が同検討会の運営方針見直し案を提示。ワクチンごとにワーキンググループ(WG)を設置して、疫学データに基づきながらワクチンの有効性・安全性・医療経済効果を評価し、政策に反映する仕組みを導入すべきだと提案した。米国の予防接種スケジュール組み込み基準なども参考にする考え。今後、健康局と協議し、次回以降の会合で同検討会の組織体制や議題の進め方を話し合うことになる。
ワクチン議連で全体の方向性を、検討会で具体策を決められれば、ワクチン政策が大きく前進する。
●予防接種検討会“加藤私案”が明らかに
加藤氏はこのほど本紙の取材に応じ、「個人的な構想段階」とした上で、予防接種検討会“改革私案”の詳細を明らかにした(
図参照
)。
どのワクチンにWGを設置するかは健康局長の権限になる。加藤氏の意見は、水痘、Hib、HPV、結合型肺炎球菌、成人百日咳、不活化ポリオ、B型肝炎などにWGを設けるべきというもの。WGごとに国内外のデータを集めて報告書を作成し、どのようにワクチンを活用すれば感染症を効率良く抑制できるかの具体策を練る。成人百日咳のように、すでに学会主導で臨床試験が行われているものもWGに組み込み、検討結果を政策に反映しやすくする。厚生労働科学研究の結果もWGで発表する。WGのメンバーには、疾患ごとに臨床家、基礎研究者、疫学者、ワクチン企業などを加える。
さらに、各WGをたばねる組織として、作業部会を設置したい考え。作業部会は、WGに具体的な検証方法を指示するほか、WGの報告書を評価する役割も担う。そのため作業部会のメンバーには、ワクチンの大家や疫学の専門家、米国事情に精通している感染症研究者らを集め、高い専門性を担保する。WGの報告書ではワクチン企業の生データを取り扱うため、WGと作業部会は関係者以外非公開とする考え。作業部会でWGの報告書を精査したのち、予防接種検討会に報告する。
同検討会のメンバーも増員する。学会関係者や厚労省医薬食品局のほかに、一般市民の代表者も加え、より国民に近い目線で議論したい考え。検討会の開催回数も増やす。
●定期/任意の枠組み再編も
さらに加藤氏は、予防接種法の「定期接種(1類疾病/2類疾病)」「任意接種」という枠組みも再編成すべきとの考えを示した。加藤氏の案は、<1>世界的に撲滅を目指している感染症は国が全額負担<2>ヒトからヒトに感染する疾病は主に自治体負担<3>個人防御を目指す感染症は自治体と個人の双方で負担−というもの。<1>はポリオと麻疹、<2>は水痘など、<3>は日本脳炎、Hib、HPV、肺炎球菌性肺炎、B型肝炎、成人百日咳−などを想定している。予防接種の保険適用については、医療費抑制の観点から慎重な姿勢だ。
(加藤氏のインタビュー詳細は1月30日発行のマンスリー号で掲載予定)
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