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元派遣、再就職に“心の壁”…「接客苦手」職種にこだわりも

1月12日3時9分配信 読売新聞


 「派遣切り」や「雇い止め」に遭った人たちの再就職先が、なかなか決まらない。

 年齢や資格が壁となっているだけでなく、慣れ親しんだ職種への「こだわり」や、新しい職種への「とまどい」もあるようだ。3月までに職を失うと見込まれる派遣社員や期間従業員らは約8万5000人。求職と求人のミスマッチ克服が課題となっている。

 「募集中の仕事はいっぱいあるんですが、今までやったことのない業種ばかりで……」。昨年11月末、滋賀県の自動車工場の派遣契約を打ち切られ、東京・日比谷の「年越し派遣村」から都内の施設に移った男性は、仕事が決まらずにいる理由をそう語る。

 12月に上京。ネットカフェに寝泊まりしながらハローワークに週3〜4回通ったが、運転免許を持たない身には、求人情報の多くが無縁に感じた。求人情報誌に載っていた「年齢、経験不問」の職場に電話したこともあるが、まず聞かれたのは年齢だった。「43歳」と告げたとたんに断られた。

 最近になって、ようやく長期間働けそうな警備会社を見つけた。「もう甘いことは言ってられない」と、覚悟を決めるつもりだ。

 昨年8月末に大手自動車工場で「派遣切り」に遭い、派遣村で過ごしてきた男性(30)も、新たな仕事が見つかっていない。

 9年間、愛知県や静岡県の自動車工場で働いてきたから、自動車関連の仕事ばかり約30社に応募してきたが、雇ってくれるところはなかった。昨年末、ホテルの住み込み清掃員に採用が決まりかけたが、「給料が安く、将来につながらない」と断った。「自分は人見知り。営業や居酒屋の店員などは難しい」と今も自動車関連の仕事を探し続けている。

 厚生労働省によると、派遣村から移った都内4施設で実施しているハローワークの就職相談では、建設、警備、旅館など、住み込みで働ける仕事を中心に約4000件に上る仕事が紹介されており、9日までに125人が求職の登録をした。しかし、生活保護の手続きや住居探しに時間を取られているという事情もあり、再就職が決まったのは数人だけという。

 厚労省東京労働局によると、求職者1人あたりの求人数を表す有効求人倍率(パート除く)は職種ごとに大きなばらつきがある。都内の昨年11月の数値を見ると、「一般事務職」は0・27倍、「製造・土木」も0・55倍と極めて低い。これに対し、資格や経験が重視されるIT技術関連、介護関連などは3倍以上となっている。

 資格を持たない人には、再就職は難しいように見えるが、特段の資格が必要ない「接客・給仕職」で5・93倍、「警備職」も5・74倍の求人があるのだ。現実には年齢や経験などの制約も受けるだろうが、同労働局の担当者は「給与や勤務時間帯など、人によってそれぞれ譲れない一線があるようです。その一線を越える仕事を無理に紹介できませんから」と話す。

 年明け以降、連日5〜10人の元派遣社員が相談に訪れている東京・豊島区のハローワーク池袋の青木和夫・職業相談部長によると、「相談にくる元派遣社員たちは素直でまじめな印象。就労意欲も高い」という。それだけに、「今まで働いてきた仕事以外の職種に気持ちを切り替えて、就職活動をすることができない人もいるのでは」と見る。

 トヨタ自動車の減産に揺れる愛知県では、昨年11月の製造業の新規求人数(パート除く)が前年同月の9646人から4120人へ半数以下に減った。しかし、同県でも介護・福祉などの職種は人手不足となっており、資格不要の仕事もある。

 同県内のハローワーク担当者は、「長年、モノを作ってきた人は、ヒト相手の仕事にとまどいがある」と分析。別のハローワークの担当者は「派遣会社からの求人に対し『派遣はもうこりごり』と敬遠する人もいるのでは」と、ミスマッチの一因を推察した。

最終更新:1月12日3時9分

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