両親の不法滞在で国外退去を命じられている、フィリピン国籍の少女の問題です。滞在期限が14日に迫る中、こうした子供たちの支援にあたってきた女性は、「強制送還が子供の心に残す傷の深さに目をむけて欲しい」と訴えています。
10日、カルデロンのり子さんは中学校の音楽部の一員として、コーラスの発表会の舞台に立ちました。
「不安もあったけれど、最後というのは考えたくなかった。これからも笑顔で、みんなと一緒に歌おうって思いました」(カルデロンのり子さん)
両親の不法滞在を理由に、国外退去を命じられているのり子さん。去年11月、1か月半の滞在期限の延長が認められましたが、その期限も14日に迫りました。
冬休みも終わり、宿題や部活に追われる、いつも通りの毎日が始まりましたが、どうしても不安がこみあげます。
「もう、こうやってみんなと楽しめるのも、少しになっちゃうかもしれないと思うと、手がつかなくなっちゃって・・・」(カルデロンのり子さん)
父のアランさんは、いつも通りに仕事に出かけました。でも、母親のサラさんは・・・
「考えたくないけど、(14日のことが頭に)入ってしまう」(母・サラさん)
「私の前では(不安を)見せないけど、1月14日という日が来ちゃうから。お父さんもお母さんも、そのことを考えていると思う」(カルデロンのり子さん)
去年の暮れ。のり子さんと同じように、国外退去を命じられている外国籍の子供たちが集まりました。
「強制送還された子どもたちも、夢や希望がいっぱいありました」(NPO法人「信愛塾」 竹川真理子さん)
その席でこう発言したのは、長年、外国籍の子供たちに日本語などを教えてきた竹川真理子さん。日本で生まれ育ちながら、強制送還された子供たちをたくさん見てきたといいます。
「子供たちの現実を見ていただければ、そう簡単に強制送還ということもなくなるのではないか」(NPO法人「信愛塾」 竹川真理子さん)
竹川さんはおととし、実際にフィリピンを訪ね、強制送還された子供たちに再会しました。
10歳の少年は、竹川さんの姿を見た途端に駆け寄って泣き出したといいます。日本にいれば小学5年生。でも、タガログ語ができないために、彼は1年生のクラスに1人混ざって授業を受けていました。
1年生のクラスを2回くりかえしても進級できず、学校に行かなくなっていた少年もいました。
「あー、デニス。あなた、学校どうしたの?」(NPO法人「信愛塾」 竹川真理子さん)
今も竹川さんのもとには、フィリピンの子供たちから電話や手紙が届きます。
「毎日、私の心がどんどん閉じてくるようなかんじがする」。手紙でこう訴えたのは、12歳の少女。言葉の壁、貧困。厳しい生活の中で、2つ年上の兄が、体調を崩して入院したと、つづっていました。「私のきょうだい、しんじゃうよ。たけちゃん、たすけて下さい」。
「手紙を読んだ時に、体がフリーズしてしまった」(NPO法人「信愛塾」 竹川真理子さん)
国外退去を命じられた子供たちの保護を訴える団体によれば、こうした子供たちは日本に5万人近く暮らしている可能性があるといいます。B
「(強制送還された子供たちの)傷の深さは、本当にはかりしれない。一生、トラウマとして残ってしまって」(NPO法人「信愛塾」 竹川真理子さん)
「最後じゃなくて、来年も再来年もあると思うので、みんなと楽しくステージに立ちたい」(カルデロンのり子さん)
14日、のり子さんの両親は入国管理局に出頭します。(12日16:20)