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医療過疎:/8 群馬大 /群馬

 ◇悪循環陥る研修制度

 「住民の命を守る最後のとりで。なんとかお願いしたい」

 08年12月、館林市の安楽岡一雄市長らが群馬大を訪れ、館林厚生病院の小児科医確保を要望した。群馬大小児科医会が同病院への常勤医2人の派遣を08年度末で取りやめ、同病院の小児科常勤医が不在となる恐れが表面化したためだ。

 群馬大は診療科ごとに出身医師や協定先の病院の医師で「医会」を構成し、人員が手薄な地域の病院に医師を派遣している。群馬大自身に余力がなくなれば当然、取りやめざるを得ない。その大きな要因として、04年度に始まった臨床研修制度の存在が指摘される。

 この制度では研修先を研修生が自由に選べるため、内容が決まっている初期研修は給与や環境面が良い首都圏の病院に人気が集中した。群馬大では03年度に104人いた新規研修医は、08年度に27人にまで落ち込んだ。

 初期で集められないと、後期研修医の確保は難しく、さらには、その後の勤務医減少につながる懸念もある。館林厚生病院の問題は、あくまで一例に過ぎない。

 県内の山間地は、へき地診療所や開業医の医師が支えている。ただ、彼らの活躍は、何かあればすぐに患者を転送できる地域の中核的な病院のサポートがあってのものだ。群馬大の弱体化は、そのまま地域の医療水準に跳ね返る。

 県のへき地医療対策協議会の委員でもある群馬大の小山洋教授(公衆衛生学)は「今の状況では、若い医師に地域医療をやらせる余力がない。地域で総合医をやりたいという意思のある若手は他の病院を選んでしまう。そうすると、人手不足は悪化する」と悪循環を指摘する。

 小山教授が描く理想は、群馬大が県内の地域医療を担うことだ。「へき地医療も自治医科大学に頼らず、その地域が自分たちの手でやるのが望ましい。そのためにも、群馬大は医師確保を進めなくてはならない」と話す。

 医師不足を招いたとの批判もある臨床研修制度だが、ここにきて見直しの動きもある。厚生労働省と文部科学省は、2年の研修期間を1年に短縮し、2年目から将来専門とする診療科に入るという案を専門家による検討会に提示した。

 導入から5年。制度改正の大きな波に、地域の医療は大きく揺れ動いている。=つづく

毎日新聞 2009年1月11日 地方版

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