インターネットで購入したヒアルロン酸を、自分で顔などに注射する行為が広がっている。10日、東京都内で開かれた日本美容外科学会で、日本医科大の百束比古(ひゃくそくひこ)教授(形成外科)らが自己注射による後遺症例を報告し、「素人は絶対にやめるべきだ」と呼び掛けた。
ヒアルロン酸は関節や真皮に含まれ、化粧品の保湿成分として使われる。美容クリニックなどでは、しわの下に注射して目立たなくさせる美容法が提供されている。効果を持続させるには約半年ごとの注射が必要だ。
神奈川県内の女性(36)は04年春ごろ、美容クリニックでこの注射を受け、口の両脇のしわに注入して約8万円払った。その後、費用がかさむため、ネットの掲示板で話題になっていた自己注射に興味を持った。
クリニックで使用していたものと同じメーカーのヒアルロン酸を、香港の輸入代行業者を通して1個約2万円で2個購入。備え付けの注射器を使い、掲示板の体験談などを基に07年12月、自分のほおや目の下に注射した。
「失敗しても半年で元に戻る」と考えていたが、2、3カ月後、注射した部分の一部が膨らみ、しこりになった。クリニックでヒアルロン酸を分解する注射を打ったがしこりはなくならず、その後、皮下にひきつれが起きる「異物肉芽腫症」と診断された。完全に元に戻すことは難しく、女性は「すごく後悔している」と話す。
香港の業者は「日本からは月に100件ほど注文があり、ほとんどは個人だと思う。医師の処方せんに基づいて使うという前提で販売しているので、自己注射に関する質問には、医師に相談するよう勧めている」と話す。
注射に使うヒアルロン酸を輸入する際には薬事法の規制を受ける。しかし、厚生労働省によると、個人が少量を自分で利用する場合は所定の手続きを経ずに入手できるという。
百束教授は「ネットでは自己注射の利点ばかりが強調されるが、後遺症に加え、注射によるショック死の可能性もある。水面下にはたくさんの事故例があるのではないか」と警鐘を鳴らす。【斎藤広子】
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