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1 月 9 日 (金)  
1/9(金)20:00更新
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子どもの脳死移植  見解見直しへ
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脳死になった子どもからの臓器移植について、小児科の医師でつくる学会は、これまで「実施は時期尚早だ」としてきましたが、近く検討チームを設けて、この見解を見直す方針を固めました。

日本小児科学会は15歳未満の子どもが脳死になった場合の臓器提供について、虐待で脳死になったケースを見分ける体制が整っていないなどとして、4年前、実施は時期尚早だとする見解をまとめました。
しかし、最近は、大きな病院を中心にけがや病気が虐待によって生じたものかどうか見分ける体制が整ってきたなどとして、今月中に検討チームを設けて、見解を見直す方針を固めたものです。
学会は、難しいとされている子どもの脳死判定についても、脳死状態の子どもの治療に関するデータが集まってきたため、医学的に判断がつきやすくなってきたなどとしています。
検討チームには小児科や臓器移植を行う医師のほか弁護士や移植を受けた患者にも参加してもらい、ことしじゅうに新たな見解をまとめたいとしています。
日本小児科学会の横田俊平会長は「日本は子どもの臓器移植を欧米に頼ってきたが、海外では患者の受け入れを制限する動きも出てきている。 社会の変化や医療の進歩に応じた見解を示したい」と話しています。
海外から移植求めるも臓器不足
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平成9年に施行された臓器移植法は、15歳未満については脳死からの臓器提供を認めていないため、子どもの患者は事実上、国内で心臓などの移植手術が受けられない状態が続いています。
日本小児循環器学会のまとめによりますと、臓器移植法の施行後、先月10日までに海外での心臓移植を希望した10歳未満の子どもは64人いましたが、これまでに移植を受けることができたのは33人にとどまっています。
海外で心臓移植を受けるには7000万円から2億円かかるとされることから渡航のための費用を募金でまかなうケースが多く、準備をしている間に亡くなったり、渡航はしたものの臓器の提供者が現れず死亡したりした子どもはあわせて25人に上るということです。
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このうち、横浜市緑区の会社員中澤啓一郎さんの長男で当時1歳の聡太郎ちゃんは「特発性拡張型心筋症」という重い心臓病で、募金を募って先月5日アメリカに渡りましたが、その5日後、移植を受けることなく死亡しました。
各国も臓器の提供が移植を希望する患者に比べて少ない状態が続いており、WHO・世界保健機関は移植に必要な臓器は国内で確保するよう求める指針を、今年5月に開く総会で採択することにしています。
このため、臓器移植を行う医師によりますと日本人の患者を受け入れてきたアメリカやドイツで受け入れを制限する動きが出ているということです。
“世界で最も遅れた国 法改正につながるよう期待”
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これについて、肝臓の移植手術を受けられずに15歳の長女を亡くし、現在、移植が必要な患者への支援活動を行っている荒波嘉男さんは「心臓移植が必要な子どもの親からたくさんの相談を受けてきたが、助けることができなかった。日本は子どもの臓器移植を海外に頼らざるをえない、世界でも最も遅れた国だ。学会が見解を見直すことが子どもの移植を認めるよう法律を改正する動きにつながり、これまで助けることができなかった子どもたちを助けられるよう期待している」と話しています。
※このニュースは1月9日20時00分時点でのものです。
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