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「現」

多様化の波にもまれ

2009年01月10日

写真

ミルキーウェイのメンバーとして「タンタンターン!」を歌う吉川友さん(右)=東京・中野サンプラザ

 「モーニング娘。」らでつくる女性アイドル軍団「ハロー! プロジェクト」の新春公演が2日、東京・中野サンプラザで幕を開けた。
 「いち、にっ、タンタンターン」
 ステージ上では県内の高校1年生、吉川友さん(16)が、アイドル予備軍ハロプロエッグの一員として、ファンに笑顔を振りまく。バックダンサーながら、1曲だけステージ中央で歌った。
 1年前の正月は「仕事」はなく、家族とお雑煮を食べて過ごした。「今年は大勢のファンに囲まれ、うれしかった」
 バブルが終焉(しゅう・えん)した92年に生まれた。たまたま中学時代にテレビ番組でモー娘のオーディションを見て、自分の力で芸能界への道を切り開く同世代の姿に、自分の将来を重ね合わせた。
 「モー娘。のメンバーを募集します」
 ネットでオーディションの告知を見つけ、親に内緒で応募した。7千人近い中から最終選考の6人に残ったが、落選した。あきらめかけた頃、芸能事務所から予備軍に誘われた。
 ハロプロエッグには現在、10代の少女24人が所属している。将来性のある「アイドルの卵」を発掘するため、レッスンは無償だ。吉川さんも月に数回、放課後にバスで片道2時間かけて上京し、発声練習やダンスのレッスンなど、本格的なトレーニングを受けている。
     ◇
 チャンスは昨秋に訪れた。モー娘が中心の3人組ユニット「ミルキーウェイ」のメンバーに選ばれ、人気アニメ「きらりん☆レボリューション」のテーマ曲を歌う。「あこがれの存在に手が届くかも」
 期待に胸を膨らませる一方で、「ミルキーウェイが終わったら、その次に何かあるのか分からない。不安です」と語る。
 日経エンタテインメントによると、女性アイドルの「平均寿命」はバブル全盛期の88年には4・3年だったが、10年後には2・9年に縮まった。背景には、アイドルの大量生産、大量消費がある。
 かつての山口百恵や松田聖子のような「正統派」よりも、吉川さんのような予備軍や、モー娘のように入れ替え自由な「ユニット」、娯楽番組で人気の「バラドル」、ネット社会が舞台の「ネットアイドル」など、アイドルの領域は多様化する。その分、門戸は広がったが、飽きられるのも早い。
 吉川さんの周りにも、自分の能力の限界を感じて去っていった少女が少なくない。
    ◇
 「アニメ見てるよ。アイドル目指して頑張ってね」。小学校の頃、地元で一緒にバスケットボールを追っかけて遊んでいた友達から手紙が届いた。疎遠になったが、活躍に気づいてくれたことがうれしかった。
 テレビでは簡単に見えた歌やダンスも、できないことばかりで悔しさと焦りが募る。周りに気を使いながら生きるのは精神的に重い。
 うまいだけでは食いつかなくなったバブル後の消費者。やたらめったら「付加価値」を求められ、商品の回転が速まるばかりの現実にもまれながら、吉川さんはレッスンから帰宅した深夜、畑に囲まれた自宅の庭先で一人、発声練習を繰り返す。
(鈴木逸弘)
=終わり

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