8日始まった衆院予算委員会で、質問に立った菅直人代表代行ら民主党の論客は、08年度第2次補正予算案に盛り込まれた定額給付金をこぞって批判した。焦点は麻生太郎首相が給付金を受け取るかどうか。以前は辞退の意向を示唆していた首相だが、政府・与党内の足並みの乱れもあり、「2次補正が通ってない段階で、もらう前提で話すのはいかがなものか」と苦しい弁明に終始した。
そもそも首相は昨年12月15日の参院決算委員会で「多額の金をもらってる方が『1万2000円ちょうだい』というのはさもしい。人間の矜持(きょうじ)の問題だ」と述べ、自らは給付金を辞退する考えを示していた。いわば高額所得者の給付金受け取りを戒める考えだったわけだ。しかし、今月6日、自民党の細田博之幹事長が「景気対策なのだから、国会議員ももらって使うべきだ」と主張、政府の統一見解を出すように求めてから、ぐらつき出した。
そうした首相の右往左往を8日の予算委で突いたのが、民主党のトップバッターとして質問した菅氏だった。
菅氏は「さもしい、とはどういう意味か」と質問。首相が「目先のことにガツガツするイメージがある」と答えると、菅氏は「広辞苑には『卑劣だ』とある」とたたみかけた。
これに対し、首相は「あの時は生活給付金の色合いが強かったので、そう答えた。今は生活給付と消費(景気)刺激の二つの必要性が出てきた。高額所得者はもらった以上に盛大に消費してもらいたい」と釈明した。
菅氏に「私は制度に反対だから受け取らないが、首相はどうか」と聞かれると、首相は「今後判断する」と明言を避ける歯切れの悪さだった。
仙谷由人元政調会長は、給付金の法的根拠があいまいなことを突いた。給付金の支給作業は自治体の事業だが、必要な費用は国が全額負担する。しかし、仙谷氏は「国が負担するためには、地方自治法で事業名が明記される必要がある(が給付金は明記されていない)」と指摘。仙谷氏は「(支給の根拠となる)法律も政令もない。なぜ堂々と法律を作らないのか」と追及した。 ただ、民主党側の追及も首相らを窮地に陥らせるまでの決定的な材料は持ち合わせてはおらず、首相や与党サイドには一種の安堵(あんど)感も漂った。【田中成之、野口武則】
毎日新聞 2009年1月8日 21時53分(最終更新 1月9日 1時01分)