2009年1月5日(月)
 総悲観の裏芽が出る。
 銀行の将来損失を肩代わりする米財務省。
 空売り銘柄は1〜3月が勝負どころか。
 三洋電機。材料が大きく、相場が若い。

(一)総弱気の裏目が出る。
(1)年末年初に日米欧の株価の底入れが鮮明となった。ニューヨークダウの9,000ドル突破に次いで、日経平均も初立ち会いで9,000円台を回復するだろう。
(2)1月3日に日経が掲載した経営者の株価予想とエコノミストの景気予想は全員が弱気論で結束していた。経営者とエコノミストはみなサラリーマン化して個性を失ったが、さすがに米国ではウオーレン・バフェットのように「千載一遇の好機」と見て乾坤一擲の勝負を挑んだ経営者が健在である。
(3)私はしばしば格言を引用するが、「弱気論者は理路整然と相場を間違う」、「人の行く裏に道あり花の山」、「不景気でも株株価は上がる」、「株価には先見性がある」、等々、先人の知恵は見事に相場の転機を予見していた。
(4)さて、前回に「大材料が出現した」と指摘したとおり、米政府とFRBによる住宅市場と自動車市場のてこ入れ策が市場人気を急変させた。
(5)第1に、FRBが政府系住宅公社の住宅ローン債権を買い取ると発表した。これを受けてファニーメイの住宅ローン金利が史上最低を更新し、新規申込件数が48%も激増した。住宅ローンが正常に機能すれば住宅価格が底入れし、住宅不況が終息する。
(6)第2に、FRBはGMの金融子会社であるGマックを銀行と認定し、その直後に財務省もGマックに5,000億円を資本注入した。Gマックが銀行となればFRBは直接低利の資金を融資することができる。資金難に陥ったGマックがGMの新車にわずか6%しかローンをつけることができなくなっていた。これこそGMの販売が50%も激減した最大の原因である。FRBの支援を受けて、Gマックは金利ゼロのローンを含む販売促進策を打ち出し、GMを支援するだろう。
(7)銀行やファニーメイやGマックに対する資本注入が米政府の財政破たんを招くと批判するエコノミストが多いが、間違いである。資本注入とは政府が増資新株を引き受ける行為だから、出資した企業の株価が回復すれば政府は巨額の売却益を取得する。現に日本の政府は過去数年間に3大銀行への資本注入(株式投資)で巨額の売却益をあげた。
(8)麻生首相は就任直後の首脳会議で日本が成功した資本注入を紹介し、米ポールソン財務長官は急遽、不良債権を買い取るために計上した70兆円を資本注入に切り変えた。麻生首相の政治的影響力を軽視した人には、その後の欧米各国の資本注入の成功が予見できなかった。
(二)銀行の将来損失を肩代わりする米財務省。
(1)米財務省は1月2日、シティバンク以外の大手銀行についても、保有資産の将来損失を肩代わりすると発表した。底なしの泥沼に落ち込んでいた証券化商品の将来損失を肩代わりするという大胆な発想を見て、私は財務省が金融市場の再建に自信を持った証拠だと感じた。
(2)昨年は、世界中の金融機関がサブプライムローンを含む証券化商品の大暴落に直面した。AAの最高格付けを取った証券でさえ80%も大暴落したから、金融機関は暴落によって穴が開いた自己資本を補うために増資や合併に狂奔し、ついには財務省の資本注入を受け入れたのである。
(3)しかしAA格債は期日まで保有すれば70〜80%は償還される。自己資本を充実して倒産の危機を乗り越えた現在では投げ売りが止まった。証券化商品の相場が回復すれば評価損は評価益に大逆転する。それゆえ将来損失の肩代わりは財務省が債券市場の再建に自信を持った証拠だと感じたのである。
(4)クリスマスから元旦にかけて、財務省とFRBが連発した3つの金融政策は住宅不況、自動車不況、金融不況の克服に威力を発揮するだろう。
(5)株価は本格反騰に発展する可能性が増したと私は思う。
(三)空売り銘柄は1〜3月が勝負どころか。
(1)エコノミストの弱気論にあおられて信用取引の買いが激減し、売りが激増した。3市場合計の信用取引の取り組みは買い10に対して売りが7以上に達している。日証金に至っては大半が株不足で、逆日歩が続出している。
(2)そんな時に各国政府の金融政策が効果を上げ始めたから、これまでジャブジャブに放出したマネーが銀行から産業界へ、産業界から金融市場へ、あふれ出すだろう。
(3)売り方は買い戻しの機会を失い、踏み上げを迫られるだろう。
(4)空売りが多い銘柄は、1〜3月が勝負どころか、と私は思う。
(四)三洋電機。材料が大きく、相場が若い。
(1)今1銘柄に絞るとすれば、材料の大きさと相場の若さから三洋電機を推したい。
(2)三洋電機はリチウムイオン電池でヨーロッパ1のフォルクスワーゲンと提携している。三洋電機が蓄積したノウハウは業界屈指の評価がある。それだけに生産を7工程に分割し、ノウハウの漏洩を防いでいる。
(3)一方、パナソニックは世界1のトヨタと提携している。パナソニックが三洋電機のノウハウと世界第3位の生産設備に着目したのは当然であるが、トヨタがパナソニックに買収を要請したという情報もある。パナソニックは早くも三洋電機に1,000億円の大型投資を行うと表明した。
(4)三洋電機の株価が出遅れたのは、パナソニックの条件がコロコロと変わったからだろう。最初に 1. 100%買収。2. 上場廃止。3. 合併。と報じられて株価は240円台に急騰した。しかし買収価格が120円と報じられて失望が広がり、最終的にゴールドマンサックス、大和証券、三井住友銀行が保有する優先株(合計70%)を1株131円で取得することで合意したと決定して、株価は130円台に下落した。
(5)しかし一般株主は時価よりも低いTOBに応募するはずがないから、パナソニックは買収条件を、1. 3社から70%を取得して子会社にする、2. 合併はあきらめる。3. 三洋電機の上場を維持する、と変更した。
(6)年末には、株価が140円を突破した途端に170円まで急騰した。投資家がようやく買収価格に縛られる必要がないことに気が付いたからだろう。
(7)パナソニックは現在の収益力と財務内容から131円を提示したが、投資家は将来の成長期待に夢を託する。
(8)リチウムイオン電池と太陽光発電を主力事業に絞り込んだ三洋電機がトヨタ、フォルクスワーゲンと提携し、パナソニックの後ろ盾を得たのだから、クリーンエネルギー時代の本命株に育つ条件を備えていると私は思う。
その他の銘柄は昨年末と同じ。