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かながわ瓦版/学生交流深まる理解
- 2008/11/18
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アラブ諸国の大学と慶大
アラブ諸国との関係を深める取り組みが、藤沢市遠藤の慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で始まっている。文化祭で出した模擬店の売り上げなどを元手に毎年、シリア、レバノンなどの大学からアラブ人学生を招き、討論などで互いの理解を進めている。「イスラムを脅威と見なす考え方にとらわれず、自分たちの目で『アラブ』を見たい」。参加する慶大生にはそんな思いもある。
SFCで「アラブ人学生歓迎プログラム」に取り組んでいるのは、奥田敦教授のアラブ・イスラーム圏研究会。アラビア語の授業の一環で二〇〇二年三月、シリアの国立アレッポ大学を訪れたことが契機になり、「今度は日本に迎えよう」との機運が慶大生の間に生まれたのが始まりだ。
同年七月に、シリアから日本語を学ぶアラブ人学生三人を招待したのが第一歩。今年は七年目を迎え、十一月三日にシリア、レバノン、モロッコの各大学から学生計五人を招いた。
渡航費などにかかる一人約三十万円の費用を文化祭の模擬店の売り上げや卒業生、企業などの寄付で工面。これまでにアラブ各国の学生三十人がSFCで学んだ。
プログラムは、研究会の慶大生約三十人のサポートで約二週間かけて行われる。アラブ人学生が決めたテーマに沿い、慶大生と一緒に約十分の映像作品をつくる。例えば、過去に制作された「サバイバル日本語」は、道案内など生活に役立つ日本語を学べる内容。現地では教材として使われているという。
今回来日したアラブ人学生のテーマもさまざま。紛争の絶えない故郷を憂い、日本の憲法九条をテーマに選んだレバノン人学生もいる。
一方、研究会に所属する慶大四年の小林周(あまね)さん(22)は〇一年の米中枢同時テロを契機にアラブ諸国に興味がわいた。「脅威といわれているが、平和への思いは一緒。日本人とアラブ人だけでなく、争いがあったレバノンやシリアなどのアラブ人学生同士の交流にもつながっている」と話す。
ほかにも、環境問題などで議論したり、茶道や着付けを楽しんだりしながら親睦(しんぼく)を深めている。
奥田教授は「将来のリーダーとなる学生が共に何かをつくり出し、共通のビジョンを描く過程が大切。テロを正当化する誤りから気付いた参加者もいる。日本人も変わらなければならないし、アラブ人も変わらなければならない」と話している。