太平洋戦争の混乱で、日本に帰国することができなかった中国の県系1世のうち、帰国して現在県内にいる人は17人で、配偶者や子どもらを含めると166人に上ることが県福祉・援護課の実態調査で分かった。
県による中国残留邦人帰国者や家族の実態調査は初めて。県の調査や相談業務を通し、残留邦人当事者の経済的な生活基盤が弱いだけでなく、配偶者や2世、3世も言葉や習慣、就労などに不安を抱えていることも分かった。県や市町村は生活相談などの支援業務を強化する方針。
県は、昨年7月から中国残留邦人帰国者について国から支給される老齢基礎年金や支援給付金の実態などを調査。在住者の子や孫をたどり家族の数も調べた。
その結果、帰国者の県内在住は17人で、うち14人が老齢基礎年金やその他の収入が一定の基準に達しない人に支給される生活給付を受けており、収入が乏しいことが分かった。また、県、市町村による2008年度の生活相談などの支援事務は146件、自宅への訪問事務は61件に上っている。
沖縄県への帰国は72年から始まった。98年までに29人が帰国したが、死亡あるいは他の都道府県に転居するなどして現在は17人。その人たちを調査した結果、家族を含めると166人となった。死亡者や県外移住者の家族は含まれていない。家族の県外在住者は22人、不明11人。国の調べでは昨年9月末現在、中国に住む県出身の未帰還者は10人。1999年以降、県内への帰国者はいない。
相談を受けている県福祉・援護課の與那嶺紀子相談員は「帰国者の多くは収入が厳しく、言葉や習慣にも壁があり、生活や老後に不安を抱えている」と指摘。「簡単な日本語しかできないので、隣人との交際も表面的なあいさつ程度で、家にこもりがち。高齢のため生活に必要な役所などでの手続きができない人もいる」と、現状を説明する。
県内で中国帰国者への支援に取り組む児玉啓子沖縄大教授は「1世の帰国者が子ども夫婦など家族を呼び寄せるケースが多い。2世や3世は生活環境に慣れず、就職も厳しいことから、うつや精神障害になる場合もある」と話し、日本語学習の場を設けることを課題に挙げた。(新垣毅)
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