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[2007.05.30 up]
 

[日本ミニマム級タイトルマッチ] 35年目の肩車

「コーチがいなければボクシング辞めたっていい」 〜黒木健孝選手〜

土浦の孫悟空≠アと黒木健孝選手(25)が5月5日に東京・水道橋の後楽園ホールで行われた 日本ミニマム級タイトルマッチで悲願の王座を奪取した。ヤマグチ土浦ジム創設35年目にして初のチャンピオン誕生の陰には、共に汗を流し支えとなった岩本朗コーチ(53)との深いきずながあった。

長崎県・佐世保生まれ。定時制高校に通いながら鉄筋工のアルバイトに汗し、15歳年上の先輩にボクシングのいろはを教わった。

「有名になりたい」と地元アマチュアジムの紹介でヤマグチ土浦ジムの門をたたいたのは18歳の春だった。

◇   ◇   ◇

「会長と話したよ。あいつスター性があるよなって」。初めて黒木選手に会った印象をこう振り返る岩本コーチ。85年ごろから兄の岩本悟会長(57)が切り盛りする同ジムでプロボクサー兼コーチとして後進を育成。教え子は1000人を超え、2選手が4度のタイトル戦に挑んだがベルトには届かなかった。

「試合には運もあるし、相手も悪かった。自分も選手もすべてをやり尽くさないで負けたから、しょうがない」。

今年に入ってから受けたミットは軽く400ラウンドを超えた。黒木選手の11KOを量産してきたパンチを受け続けた肩やひじは、いつしか悲鳴を上げていた。シップやマッサージで痛みをごまかしつつ、ただ耐えた。それもこれも、自分はやるだけのことをやって後は選手に任せたい一心からだった。

そんな岩本コーチが抱いてきた夢は「肩車」。いつか、自分の育てたボクサーがチャンピオンになったらリングの上で肩車したい―。だがその思いを語ったことはなく、今回は試合前の黒木選手にだけ口を滑らせた。「黒木、おれと肩車してリング1周させてくれよな」。

◇   ◇   ◇

4月下旬、黒木選手は減量に入った。早朝のロードワークの後、朝・昼兼用の食事をしてラーメン屋でいつも通り仕事をこなし、午後6時からジムワーク。練習後は豆腐2/3丁でのどを潤し、海草サラダを時間をかけてかむ。のどが渇くからしょうゆやドレッシングはかけない。水分は牛乳や青汁など栄養のあるもの。少ない夕食はリミットの47.61Kgまで体を絞るため、試合に勝つため、チャンピオンベルトを土浦に持ち帰るため。そして何よりも、コーチと肩車するため―。

◇   ◇   ◇

試合は荒れた。初回から手数で圧倒したが、5回にはカウンターを奪われダウン。インターバルで岩本コーチは怒鳴った。「負けたらお前を見に来てくれたファンに何て言うつもりだ!負けて土浦に帰れんのか!!」

このままでは終われない・・・£シ後、ダウンを感じさせない動きで圧倒したが、7回、相手の頭が左眉を直撃。鈍い音と共に目じりから汗混じりの血がしたたり落ちた。

レフェリーは試合続行不可能と判断し判定へ。リングアナがマイクを持った。「3―0の判定をもちまして、日本ミニマム級・・・」黒木選手はロープに身を任せていた。


黒木 健孝 Yasutaka Kuroki くろきやすたか
1982年1月9日、長崎県生まれ。 18戦15勝(11KO)3敗の左ボクサーファイター。
好きな言葉は「集中」。
OPBF東洋太平洋ランキング3位
WBA(世界ボクシング協会)ミニマム級9位
WBC(世界ボクシング評議会)同級10位

「新チャンピオン!黒木健孝!」勝者は高々と左手を上げ岩本コーチはリングに駆け上がった。2人は約束通り肩車し、リングを1周した。岩本コーチは右こぶしを高く突き上げた。その目は真っ赤だったけれど、決して泣かなかった。

◇   ◇   ◇

試合から20日。「夢だったよな、あれが」と語る岩本コーチだが、初めて日本チャンピオンを出したジム内に浮かれた雰囲気はなく、練習生や未来のプロボクサーを見つめる眼差しは真剣そのものだ。「肩車は夢だったけど、日本タイトルが終わりじゃない」。

一方、黒木選手は「コーチはいなくてはならない存在。見捨てると言われたらボクシング辞めますよ。コーチが見てくれること、変わらないでいてくれること。それがボクシングをやっている理由かもしれません」。肩車は夢だった。それがかなった今、固いきずなで結ばれた師弟愛はすでに夢の続きに向かっている。


 

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