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◆臨床研修、なぜ1年に短縮?
なるほドリ お医者さんの臨床研修が1年に短縮されると報じられたけど、どうして?
記者 今の研修制度が地方の医師不足の一因になっているとの批判があったからです。
Q どういうこと?
A 医学部を卒業した新人医師は現場で2年以上の研修をするよう医師法で定められ、以前は大半が大学の診療科(医局)にそのまま残り、下働きをしていました。でも、それでは総合的な診療能力が育たないということで、04年度からは2年間で7診療科(内科、外科、救急、小児科、産婦人科、精神科、地域医療)の研修が義務付けられました。その研修先の病院を原則自由に選べるようにした結果、地方を中心に大学病院から離れる研修医が増えたのです。
Q 大学病院から研修医がいなくなると、地方の医師不足につながるの?
A 大学病院は、人手が足りない地域や診療科に医局の医師を派遣してきました。ところが医局の働き手が減ってしまい、大学が派遣していた医師を地域から引き揚げるようになったのです。
Q 1年に短縮すれば地方の医師不足は解消するの?
A 研修期間を実質1年に短縮して2年目から医局入りを容認することで、医局の働き手を確保する案が出ているのです。この案では必修は内科や救急など2~3科に減る見通しです。また、研修医の募集定員に地域別の上限を設ける案も出ていて、厚生労働省と文部科学省が10年度から制度を見直そうと検討を進めています。
Q 1年でちゃんと勉強できるの?
A 日本病院会のアンケートでは、全国651病院の7割が2年を支持し、医学部6年生を対象にした別の調査でも短縮賛成は2割以下に過ぎません。見直しを「本末転倒だ」と批判している医療関係者も少なくありません。
Q うまくいくのかな?
A 医学部生へのアンケートでは、地方の医師不足地域で働く条件に約7割が「待遇(給与)の良さ」を挙げています。でも、地方の自治体病院などは慢性的な赤字経営ですから、国の医療費が増えないと医師不足の根本的な解決は難しいでしょう。(社会部)
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毎日新聞 2009年1月4日 東京朝刊