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韓国の底力:危機を経験するたびに成長する大韓民国

 1990年代の終わりごろ、米国市場で現代自動車は四面楚歌の状況に陥っていた。在庫が増え、ディーラー網は崩壊していった。現代というブランドは安物の代名詞だった。「わたしの時計はあなたの現代車よりも高いんだよ」というようなジョークがテレビのトークショーで流行するほどだった。現代自韓国本社は通貨危機の後遺症にあえいでいた。

 危機のさなかに最後のカードが切られた。それは「10年間10万マイル無償保証」だった。競合メーカーの保証期間が「3年間3万マイル」だったことを考えると無謀な賭けにも見えた。しかし、現代自の従業員は背水の陣を敷いた。10万マイル保証を裏付けなければ会社は滅ぶしかなかった。

 ところが信じられないことが起きた。それまで難関だった「品質の壁」を突破することに成功したのだ。現在、現代自のさまざまな経営指標は世界でもトップクラスだ。負債比率、営業利益率では、業界で世界最強とされるトヨタ自動車をも上回る。危機を経験しなければ、現代自はまだ安物メーカーにとどまっていたはずだ。

 韓国経済は危機に強い。危機のたびに新たに成長し、一段階アップグレードする。韓国がサムスン電子、LG電子、ポスコ、現代重工業、SKテレコムなどのグローバル企業群を擁するようになったのも通貨危機のおかげだった。危機の中で企業は古いものを捨て、新たに変身した。韓国経済にとって通貨危機はのろいではなく「祝福」だった。

 2000年8月4日、ミャンマーの首都ヤンゴンのトレーダーズ・ホテル大会議室で契約書に署名した大宇(現大宇インターナショナル)のイム・チェムン理事(現副社長)の手は震えていた。ミャンマー西海岸のガス田鉱区の独占探査権を手にした瞬間だった。しかし、喜びよりは緊張感のほうが上回っていた。

 大宇は当時、存亡の岐路に立っていた。通貨危機の影響でグループ全体がワークアウト(企業改善作業)の対象となっており、資金難に苦しんでいた。数百億ウォンが必要な探査に失敗すれば、会社が傾く恐れもあった。

 大宇に与えられた試掘のチャンスは事実上1回だけだった。済州島ほどの面積の海域に直径1メートルの試掘井を掘り、たった1回でガス田を発見しなければならなかった。海底3200メートルまで試掘井1本を掘るのに1500万ドル(現在のレートで約13億6000万円)がかかった。1回失敗すれば終わりだった。しかし、目の前にあるチャンスをあきらめるわけにはいかなかった。悩んだ末にゴーサインが下された。

 それから3年5カ月後、2004年1月7日にソウル本社のイム理事にミャンマーから国際電話がかかってきた。「(ガス層を)確認しました」という知らせだった。3年間にわたり内心はらはらだった林理事が初めて歓声を上げたのはその時だった。ガス田では韓国国民の3年分の需要量に相当するガスが発見され、大宇インターナショナルも再建の足がかりをつかんだ。

 振り返れば、韓国の経済成長自体が危機克服の歴史だった。韓国経済の飛躍は必ずといってもよいほど危機局面で成し遂げられた。70年代のオイルショックで軽工業から重化学工業に、80年代後半の賃金高騰時にはOEM(相手先ブランドによる生産)からODM(相手先ブランドによる設計・製造)へと産業構造を転換した。2000年代に中国の追撃を受けると、グローバルブランド戦略へとさらに発展を遂げた。

 韓国経済は攻撃的なスタイルだ。危機を迎えれば迎えるほど攻撃に打って出る。1970年代の石油危機当時、われわれは敵陣深く攻め込む戦略を立てた。オイルダラーがあふれる中東で建設と労働力輸出を行い、原油を購入するためのドル資金を稼いだ。

  ポスコは危機に直面したときほど投資を増やす企業として有名だ。第2次石油危機の直後に当たる1980年代初めに光陽製鉄所を建設し、先進国の低成長による1991年の危機の際には韓国の製造業投資の10%に当たる額を同社だけで投資した。ITバブル崩壊により米国で鉄鋼メーカーが破綻した2000年代初めにも毎年1兆8000億ウォン(約1300億円)を投資した。そのおかげで他社より多くの果実を得ることができた。

 サムスン経済研究所の韓昌洙(ハン・チャンス)首席研究員は「韓国人には危機に強く反応する遺伝子がある」と指摘する。歴史的には三国時代、高麗、朝鮮王朝に至るまで国難に際しては民族的エネルギーが噴出し、驚くべき底力を見せた。

 ソウル大の宋虎根(ソン・ホグン)教授(社会学)によれば、韓国は危機に強いあらゆる条件を備えているという。狭い国土では競争密度が高く、競争に勝つためのイノベーションがおきやすいとの指摘だ。

 年の瀬に喜ばしい知らせが舞い込んだ。株価指数算出機関のモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)は2009年の韓国企業の1株当たり純利益増加率が10.5%に達すると予測した。台湾(マイナス38.1%)、香港(マイナス10.7%)などアジアの各国・地域は厳しい数字が並んでいる。韓国経済がそれだけ危機に強いことを示している。

朴正薫(パク・ジョンフン)経済部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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