セロトニンは脳の神経伝達物質の一つで、眠っているときはほとんど分泌せず、起きているときに分泌が活発になります。『セロトニン欠乏脳』のなかで、著者の東邦大学医学部教授の有田秀穂先生はその働きを「オーケストラを束ねる指揮者」に例えています。
「オーケストラの指揮者のように、タクトを振ると、各パートの演奏者がそれぞれの楽器を奏で、曲全体の雰囲気を作る」のがセロトニンで、脳全体にゆきわたることによって脳が覚醒し、気分がすっきりしてものごとをスムーズに行えるようになるというのです。
逆にセロトニンの分泌が低下すると、次のような症状があらわれるとか。
セロトニンを分泌しているのはセロトニン神経。セロトニン神経は脳のなかの脳幹という基幹部にあり、さらにその中心部(縫線核)に位置するということからも、重要な役割を担っているのがわかります。
また縫線核の周辺には歩行、咀嚼(ものを噛む)、呼吸などをつかさどる中枢があり、そのため呼吸法が効果的なのです。
セロトニン呼吸法のやり方はとても簡単(イラスト参照)。ポイントは、息を完全に切ることです。
呼吸法を始めて1週間から10日ほどでうつ病がよくなったという実例も多いということで、そのほかにも集中力が高まってスポーツの成績がよくなった、少々のことで動揺しなくなったなど、その効果は比較的短期間のうちにあらわれるようです。でも、そこでやめてしまってはもとの木阿弥。最低3ヶ月は続けることをすすめています。要は毎日の習慣にするのがよいということでしょう。
セロトニンの分泌が悪くなってしまうのはセロトニン神経が弱るためですが、その原因は現代的な生活にあると有田先生は指摘しています。昼間に活発に働くセロトニン神経はいわゆる体内時計と密接な関係にあるため、まず昼夜逆転の生活や夜更かし朝寝坊は天敵。運動不足や、緊張状態が続くストレス過多もダメージを与えます。
ストレスと無縁ではいられない現代人だからこそ、セロトニン呼吸法で脳を鍛えることが必要といえるでしょう。
1. 1〜3を1分間に3〜4回、20〜30分行う。
2. 吐く時間は吸う時間の1.5〜2倍。8〜10秒吐いて5〜7秒吸う(15秒に1回呼吸の場合)、または12秒吐いて8秒吸う(20秒に1回の場合)
3. 1日に1〜2回行う。朝に行うと効果的。
禅の呼吸法にもつながるセロトニン呼吸法。セロトニン神経活性化には、ウォーキングや水泳、朝に太陽光を浴びる、ガムを噛むことなども効果的だとか。
セロトニン欠乏脳 キレる脳・鬱の脳をきたえ直す
有田秀穂著/NHK出版 定価714 円 (税込)
ここ一番に強くなる セロトニン呼吸法 スポーツからスピーチまで
有田秀穂/高橋玄朴著/地湧社 定価1575 円 (税込)