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【コラム】あなたは世界最高ですか?

 昨年初めまで住んでいた東京都中央区佃に、「漆芸(うるしげい)中島」という店があった。はしや食器など、漆器の製造・販売をしている住宅街の典型的な小さな店だったが、店先に水とこんにゃくの入った器を置いているのが特徴だった。

 この店の自慢は、檀の木を削って作った「江戸八角箸」。名前の通り、八角形のはしだ。店では、このはしを「何でもつかめる世界最高のはし」と胸を張る。水を張ったこんにゃくは、この言葉を証明するため置いているのだ。はしの先まできちんと八角形に削ってあるので、誰でも濡れたこんにゃくがはしでつかめるようになっている。

 「面白い」と思い見ていたところ、その値段に仰天した。材料の檀の質により、はし1膳(ぜん)が3990円から1万3650円もする。しかも、店主が11代目と聞いて、2度驚いた。300年前から子々孫々、はしを作ってきたとは、「世界最高のはし」という言葉は、商売人の大げさな話として聞き流せるようなものではなかった。

 韓国の足元が揺らぎ始めた昨年10月、世界最高のすし職人にインタビューしたことがある。世界的なレストラン・ガイドブック「ミシュラン」で最高の三つ星評価を2年連続で受けた水谷八郎さんだ。水谷さんに、すしのすべてとも言える魚とコメに関する話を聞き、日本という国がさらに遠く感じられた。

 水谷さんは、自分で魚やコメ選ぶことはないという。「魚はなじみの魚屋の主人が選んでくれるし、コメはなじみの米屋の主人がいろいろな産地のコメを“黄金比”でブレンドしてくれる」そうだ。自身の「握り」の実力がどれだけ優れていても、魚屋の「世界最高の」魚を見る目と、米屋の「世界最高の」ブレンドの腕という基盤がなければ、世界最高にはなれないということだ。水谷さんのすし店も、魚屋も、米屋も、店の規模は決して大きくない。

 昨年7月、夏休みでソウルに行き、街でガッカリした。デコボコで泣いている街の大通り、継ぎ目が乱れた歩道のブロック、舗装してあるのにあちこちくぼんで水たまりができている道。今、暮らしている杉並区荻窪は東京都の中心にある町ではないが、そんな道路はめったにない。日本は道路を作る作業員も世界一なのか、それとも韓国の道路作業員の仕事がいい加減なのか。

 今、韓国も日本も経済危機に直面しているが、その内実は正反対だ。日本は「円高」、韓国は「ウォン安」で悩んでいる。言い換えれば、日本は上がりすぎた国の信用度と、韓国は下がりすぎた国の信用度と闘っているのだ。これは産業化以降、一貫した流れだった。1980年に2.6倍だった両国の通貨価値の差は、現在14倍まで広がり、韓国は通貨スワップ協定で日本に再び世話になっている。

 わたしたち韓国人はいつも「三流の政治」のせいにする。しかし、日本も政治家の実力と実績は客観的に言って三流だ。日本に住んでみると、はし店・魚屋・米屋・工事作業員の努力や実力が、韓国とは明らかに違うように思える。一部の政治家ではなく、国民全員が国の現実に責任を負っているのだ。

 外から見ると、韓国は相変らず米中日という不沈空母に守られている帆掛け船のようなものだ。虚勢を張らず、他人のせいにするのもやめ、今年はもう少しクールにそれぞれが自らを省みる必要があるのではないかと思う。今、韓国は10年前のアジア通貨危機時とは違い、自己反省が足りないように見える。だからこそ、もっと危ないかもしれない。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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