ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 千葉 > 記事です。

千葉

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

千葉を翔ぶ:/1 ドクターヘリ 空から祈る県民の幸せ(その1) /千葉

 ◇県内第2号、君津中央病院に配備

 医師と看護師を乗せて重傷患者の元へ駆け付け、医療機関へ搬送するドクターヘリが各地で活躍している。千葉県を含め14道府県が運航しているが、君津中央病院(木更津市桜井)には5日、県内2機目となるドクターヘリが配備される。1機目は7年前に日医大千葉北総病院(印旛村)に配備され、年間700件近い出動実績を誇る。2機目の配備は静岡県に次いで2カ所目。救急医療の「新しい砦(とりで)」となる君津中央病院の準備の模様を紹介する。【黒川将光、柳澤一男】

 ◆救急医療の「新しい砦」

 昨年11月初旬、君津中央病院の救急医、大谷俊介(32)は日医大千葉北総病院にいた。千葉北総で実際にヘリに搭乗する研修が行われたのだ。

 「ドクターヘリ出動」。連絡を合図に大谷はヘリポートに走り込み、千葉北総のフライトドクター、八木貴典(37)と飛び立った。

 大谷にとっては5回目のフライト。16分後、長柄町の水上小校庭に降り立った大谷を待っていたのは、大型トラックとの衝突事故で重傷を負った女性(73)だった。意識はなく、胸部打撲で右の肺が気胸(肺外側の胸膜腔(くう)に空気がたまった状態)と判断。酸素を取り込めず、血圧低下やショック状態も予想される。急いで肺にトロッカー(空気を抜くための管)を入れた。

 ◆研修の医師、緊張感違う

 その時、八木が言った。「左にもトロッカーを入れたほうがいいですよ」

 狭い機内では座席配置の関係で医師が患者の左側には回りにくい。もし、左も気胸だった場合、搬送中に容体悪化の恐れもある。八木の経験からの一言だった。

 処置を受けた女性はヘリで亀田総合病院(鴨川市)に運ばれ一命を取り留めた。千葉北総に戻った大谷は「この患者さんはヘリでなければ救えなかった」とほっとした表情。

 研修は実機搭乗やヘリの知識を学ぶ安全講習だけでなく、狭い空間での処置に慣れるため救急車を利用して行う「初療研修」など盛りだくさんだ。騒音や振動には慣れたが、痛切に感じたのは現場での「不自由さ」。処置の仕方は病院と同じでも、ヘリでの出動は緊張感が違う。「冷静に判断できるようになるには場数が必要だ」と話した。

 ◆看護師にも環境の落差

 君津中央のフライトナース、河野和子(43)も、医師と同様に千葉北総で搭乗研修を行った。君津中央には救急の看護師が約60人いるが、うち8人がフライトナース要員。研修期間中9回のフライトを経験したが、病院と現場での治療という環境の落差に、戸惑いは大きかった。

 ◆地域医療のサポートに

 現場では看護の技量以上に、短時間に患者の状態を聞き出したり、救急隊に協力を求めたりする迅速な判断が求められる。初めて出動したのは、酒々井町で女性が急性肺炎で意識不明になったケース。「関係者が走り回り、患者やその家族に声をかけづらかった。挿管など病院ではそれほどでもないことも、現場では難しく感じた」と話す。

 河野は看護師になって22年間、君津中央で勤務してきた。そのうち12年間は救急専門。救急の看護師として技量を高めたいと、ヘリ搭乗に志願した。

 木更津出身の河野は言う。「遠方から長い時間をかけて来られる患者さんも多い。ヘリが導入されることは、地域医療へのサポートになると思う」。配備後は、医師と看護師それぞれ8人で「ヘリ当番」のローテーションを組み、現場に向かう。(敬称略)

==============

 人命救助、物資輸送、パトロール、報道取材、遊覧……。高速で移動でき、どこにでも離着陸できる特性を生かし、私たちの生活を支えているヘリコプター。「千葉を翔(と)ぶ」をテーマに、普段はあまり私たちの目に触れることのないヘリコプターの運航現場に密着し、フライトに従事する人たちの物語を紹介します。

毎日新聞 2009年1月1日 地方版

 
郷土料理百選
みんなで決めよう!08年重大ニュース

特集企画

おすすめ情報