三河湾の海底に、酸素が乏しく生物がすめない「デッドゾーン」が広範囲に広がっていることが確かめられた。愛知県水産試験場(蒲郡市)が湾内20水域で海底の状況を調べ、貝類など底生生物が全く生息していないポイントを含む水域が9割に達することがわかった。浚渫(しゅんせつ)や埋め立てが影響していると見られている。
三河湾が生物にとってどんな環境か知る手がかりに、と調査した。「デッドゾーン」は各地の湾など閉鎖性の高い水域で問題になっており、網羅的な調査は珍しいという。
赤潮の沈下などが起きやすく、海水の環境が一番悪いと考えられる夏場の状況を調べるため、08年7〜9月にかけて実施。港や埋め立て地の周辺など20水域を選び、計約100ポイントで海底にある泥を採取した。
その結果、半数前後のポイントでは、貝類やエビ、カニ、ゴカイなどの底生生物がまったく見つからなかった。20水域中、こうしたポイントを含む水域が18に達した。
18水域のうち12水域の泥からは、強力な酸素消費物質である硫化物が、乾燥させた泥1グラム当たり2ミリグラム(乾燥前に測定)以上の高濃度で検出された。水産業などの目安とされる水産用水の環境基準値(1グラム当たり0.2ミリグラム)の10倍以上にあたる。硫化物は周辺の海域にも流れ、悪影響を及ぼしている可能性があるという。
三河湾内には、航路確保や埋め立て地造りのため浚渫された場所が点在し、そのくぼ地が残っている。狭い水路などもある。くぼ地にたまった酸素濃度が低い水のかたまりは、水流の変化で一気に浮上した時に生物に大きな被害をもたらすとされる。
愛知県のアサリ漁業を支える豊川河口のアサリ稚貝が01、02年に大量死した際も、浚渫後のくぼ地の存在が要因として指摘された。大量死は今年も起きている。