廃止が相次ぐ夜行寝台列車や今月引退した初代0系新幹線を惜しむ声は多いが、人知れず最後の力走を続けている貨車がある。JR貨物の「ワム80000」で、通称ワムハチ。一昔前まで全国で見られたが、数年内に全車引退することが確実になった。【鶴谷真】
ワムハチは鋼鉄製の箱形で1両は全長10メートル、15トン積み。国鉄時代の1960~81年に約2万6000両が造られ、経済成長を支えた。しかし、駅での作業に人手と時間がかかるうえ、最高時速が75キロと遅い。
一方、1959年にコンテナ列車が登場。現在の主力は5トン積みを5個ずつ載せた台車を連ねるタイプで、最高時速は110キロ。駅到着後、フォークリフトでトラックに積み替え、届け先へ直行できるため移行が進んだ。
ワムハチは現在、富士・吉原(静岡県)-梅田(大阪市)▽春日井(愛知県)-新座貨物ターミナル(埼玉県)▽焼島(新潟市)-隅田川(東京)の計3区間だけを走り、1日1往復のみ。紙だけのまとまった需要があるため、製紙会社から新聞社向けなどに運んでいる。
ワムハチは現在約550両に減少。車両の老朽化も進み、梅田便は梅田駅が再開発に伴い分散移転する11年までにコンテナ輸送に変え、その前後に他区間のワムハチも引退する見込み。鉄道イベントを手がけるタレントの小倉(こくら)沙耶さん(28)は「引退は寂しいが最後まで頑張ってほしい」と話している。
毎日新聞 2008年12月26日 大阪夕刊