余録

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余録:活字復権

 この時期、書店の店頭で年末年始のテレビ番組を特集したガイド誌が目につく。深刻な不況で、海外旅行やホテル越年が減った「巣ごもりの冬」だ。リモコン片手に安上がりの休みをと、手に取った人も多いだろう▲活字復権の好機では、と思うのだが、逆風は吹き募る。ノンフィクション中心の硬派からサブカルチャー系まで、雑誌の休廃刊が相次いだ。関西の老舗情報誌「Lmagazine」(京阪神エルマガジン社)も、先週発売分が最終号になった▲「蟹工船(かにこうせん)」ブームや、タレント本のベストセラーが今年の話題になったが、これだって長続きするはずがない。繰り返し読んで一生付き合える良書も、目に留まらないまま棚に埋もれて姿を消していくのが、なんとももったいない▲興味深い数字がある。毎日新聞社と全国学校図書館協議会がまとめた今年の学校読書調査では、1カ月に読んだ本の数が小学生の平均で11.4冊と、過去最高になった。これが、高校生になると「1冊も読まなかった」が半数を超える▲小学生の読書志向は、学校で一斉読書活動が広がり、先生たちが積極的に本を紹介している効果が大きい。家庭で本を読み聞かせてもらった経験が、読書好きの子を育てることもデータから明らかだ。一方で、中学、高校生の6~7割は最近、読書を勧められた経験がほとんどないという。ここが鍵だろう▲お笑い番組に飽きた少しの時間でいい。活字に親しんだ世代が読書の楽しさを語り、本を広げる機会を作ってやりたい。煙ったがられても、あきらめてはいけない。広大な活字の海に人をいざない、知を共有することは、得難い喜びのはずだ。

毎日新聞 2008年12月29日 0時06分

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