東京・渋谷の再開発をめぐり、三菱東京UFJ銀行(旧東京三菱銀行)が03〜05年、都内の住宅販売会社を融資の受け皿にして、暴力団と関係が深かった不動産会社の元社長(48)側に約62億円の地上げ資金を提供していたことが分かった。同行の呼びかけで他の銀行も加わった融資総額は216億円に達し、その後、土地の転売に成功した元社長側は約90億円の利益を得たとされる。
三菱東京UFJ銀行広報部は「個別のことなのでコメントできない」としている。
地上げが行われたのは、JR渋谷駅に近い渋谷区南平台町の商業地約6948平方メートル(約2100坪)。土地の買収は03年から始まり、現地にあったビル8棟の買収や競売に出された都の施設の落札などを経て05年10月までに終えた。現在は、これを約422億円で買い取った大手不動産会社が高層ビルの建設を進めている。
複数の取引関係者の話を総合すると、地上げを仕掛けた元社長は、自身の会社が多額の融資を受けることは難しかったため、融資に住宅販売会社(東京都武蔵野市)を介在させることにし、東京三菱銀行の新宿副都心支店幹部(いずれも当時)に相談。支店も、住宅販売会社を通じて元社長側に地上げ資金を提供するという、結果的に迂回(うかい)融資となる仕組みを了承したとされる。
住宅販売会社がそれまで取引していたのは同行三鷹支店だったが、元社長が事情を知る新宿副都心支店に代えさせたという。また、住宅販売会社は、その後の融資関係の交渉や立ち退き交渉にはかかわらず、いずれも弁護士と協力した元社長が仕切った。住宅販売会社関係者によると、元社長側は地上げで約90億円の利益を得たという。