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【萬物相】パイロットの英語力

 米ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港で昨年4月、エアチャイナ機が着陸すると、管制塔から「係留場に進入せよという確認を得たか」との問いかけがあった。中国人の機長はつたない英語で、「OK、係留場に進入する」と答えた。すると管制官が「今わたしが言ったのは命令ではなく質問だ」と再び聞き返したが、機長は6回も同じ答えを繰り返した。このやりとりが米国の動画サイトに掲載され、世界中で数十万人が視聴した。屈辱を受けたエアチャイナ社は国際線の操縦士に英語の試験を実施したが、15%が不合格だった。

 JFK空港で1990年1月、コロンビア・アビアンカ航空52便から管制塔に「燃料が残り少ないため着陸を優先して欲しい」との要請があった。管制官は、スペイン語混じりの機長の言葉が理解できなかった。結局同便は、着陸を待つ間に燃料切れで墜落し、73人が死傷した。ブラックボックスに録音されていた乗務員の最後の言葉は「やつらは狂っている」だった。また96年、インドのニューデリーを離陸する旅客機と着陸する貨物機が空中で衝突し、349人が命を落とす惨事となったが、これも意思の疎通がうまくいかなかったために起きた事故だった。

 国際民間航空機関(ICAO)は毎年、航空事故全体のうち、英語のコミュニケーション不足による航空事故が15-20%起きているのを受けて、「今後4年以内に英語ができない操縦士と管制官を国際線業務から外すように」と非英語圏の国家に対して要求した。韓国の航空当局が2004年-05年に一部対象者に対し試験を実施した結果、合格率は27-41%に過ぎなかった。ところが、ICAO期限の3月に実施した試験では3600人全員が合格した。

 理由は、航空安全本部が予想問題をすべて公開したからだ。というのは、公開しないと不合格者があまりにも多いため、航空機の運航がまひする恐れがあったからだ。とはいえ、合格者の95%は100点満点中65-79点の最低ラインで合格した。操縦士と管制官は「状況によって使う言葉がマニュアル化されているため、航空機が危険にさらされることはまずない」と主張した。航空英語ではなく、一般英語でテストをすれば不合格とならざるを得ないとの主張もあった。

 韓国の航空当局と航空会社、操縦士労組は、試験をさらに容易にするために、航空英語中心の試験に変更することを検討しているという。だが、運行中に定められた英語だけを使うわけではない。突発状況に遭遇することはいくらでもある。コミュニケーション不足が大きな事故につながる可能性は十分にある。こうしたことから英語圏の操縦士がアジア圏での飛行を「暗黒の中に入る」というわけだ。英語の実力向上を考えず、試験だけを何とか免れようとする安易な態度がもどかしい。

金泓振(キム・ホンジン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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