【エルサレム前田英司】イスラエル軍は27日、パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスの関連施設に対し、同地区全域にわたって大規模な空爆を実施した。ガザの保健当局によると、少なくとも155人が死亡し約200人が負傷。イスラエル軍は声明で、空爆はガザからイスラエル領内に撃ち込まれるロケット弾攻撃への報復だと表明、今後、さらに攻撃を強めると警告した。
自治区へのイスラエル軍の攻撃による1日の死者数としては、例のない最悪規模の惨事となった。子どもを含む市民が巻き添えになった可能性が強い。ハマスはただちに報復を宣言。イスラエル南部に報復とみられるロケット弾が撃ち込まれイスラエル人1人が死亡した。今後、「暴力の連鎖」が拡大するのは確実な情勢だ。
ガザからの情報では、イスラエル軍は警察署など地区内のハマス関連施設を標的に、約30発のミサイルを撃ち込んだ。地上軍は投入していない。ハマス報道官によると、ガザ市の警察施設では新任警官の訓練終了式典中に攻撃を受け、警察幹部を含む少なくとも40人が死亡したという。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は、攻撃は「犯罪行為だ」と非難し、国際社会に対し介入するよう呼びかけた。米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は声明を発表し、「ハマスが標的であるなら、市民の犠牲者を出さないよう要求する」と述べ、イスラエルに対し攻撃に歯止めをかけるよう求める一方、イスラエルへのロケット弾攻撃を続けるハマスを強く非難した。
イスラエルとハマスは6月、エジプトの仲介で停戦し、ガザ情勢はしばらく沈静化した。しかし、11月上旬から衝突が再燃。停戦は今月19日で失効し、緊張が高まっていた。
ガザ地区からイスラエル領へのロケット弾攻撃は、ハマス以外の武装勢力も行っている。イスラエルは24日の治安閣議で、ロケット弾攻撃に対する報復強化を決定。軍は声明で「報復される責任はハマスにある。テロ組織に隠れ家を提供したりすれば『テロリスト』とみなす」と警告した。
毎日新聞 2008年12月27日 20時43分(最終更新 12月28日 0時07分)