ホーム > ニュース > 

主張「第三国定住」導入で拡充へ

公明新聞:2008年12月26日

10年度にミャンマー難民受入れ
人権大国への確かな一歩に

難民政策

 「難民鎖国」の汚名を返上し、世界に冠たる「人権・人道大国」建設への一歩としたい。

 日本の難民政策が大きく転換されることになった。

 紛争や弾圧を逃れて他国に保護されている難民を受け入れる「第三国定住制度」の導入を政府が正式に決めたもので、このほど麻生首相がグテーレス国連難民高等弁務官に伝えた。より多くの難民に門戸を開くものとして、率直に評価したい。

 日本の難民政策は、2004年に公明党の推進で入管・難民認定法が改正されて以降、着実に改善されてきた。昨年1年間の難民申請者を見ても、その数は816人にまで膨らんでいる。だが、それでも実際の受け入れ数(認定数)は毎年数十人程度で、昨年もわずか41人を認定しただけにすぎない。年間数千人規模で受け入れている欧米諸国とは依然、大きな開きがある。

 この格差を生んでいる理由の一つが第三国定住制度だ。かつて公明党の難民政策プロジェクトチームの会合に出席した国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のD・アルカル首席法務官も、「第三国定住制度は日本の難民政策を大きく改善するはず」と早期導入を訴えていた。

 UNHCRが作る推薦リストを基に、第三国が受け入れ難民を入国前に決定する同制度は、第三国すなわち先進国の認定作業を簡略化するだけではない。紛争周辺国の負担軽減や、審査を受けようにも第三国に渡る資金を持たない「より困難な難民」の救済にも道を開く。

 それだけに、今回の政府の方針転換が持つ意味は大きい。「鎖国ニッポン」のイメージを一掃するものとの期待がかかる。

 麻生・グテーレス会談では、同制度に基づく措置の第1弾として、10年度にタイの難民キャンプで暮らすミャンマー難民30人程度を試行的に受け入れることが確認されている。対象者はUNHCRがタイで希望者を募った後、日本政府派遣の担当者が面接して決める。政府はすでに具体化に向け準備に入っているが、今後の本格導入に向けて検討すべき課題は少なくない。

 第1に、難民選別の基準の問題がある。経済的利害を優先させて、日本にとって都合のよい難民だけを選ぶようなことは許されない。「最も苦しんでいる難民を優先する」との徹底した人道的態度が求められよう。

 受け入れ後の環境整備の問題もある。難民にとって日本が「第二の故郷」となるよう、日本語習得や就労、居住地など、さまざまな面できめ細かな支援態勢を用意したい。

「内なる国際化」を

 そのためにも欠かせないのが、「内なる国際化」ともいうべき日本の市民社会の成熟だ。いまだに政治家の口から「単一民族神話」がまじめに語られ、「国籍」の呪縛にとらわれた制度がなお少なからず残るこの国に、「多文化・多民族共生」の風をどう吹き込んでいくか。詰まる所、難民政策の成否はこの一点にかかっていると言ってよい。

関連リンク

  • 関連する記事は、見当たりませんでした

公明新聞をぜひご購読ください。公明新聞紹介

ページのTopへ