会見中、厳しい表情を見せるトヨタ自動車の渡辺捷昭社長=22日午後、名古屋市中村区、古沢孝樹撮影
会見で厳しい表情を見せる渡辺捷昭社長(左から3人目)らトヨタ自動車の幹部=22日午後、名古屋市中村区、古沢孝樹撮影
トヨタ自動車は22日、09年3月期連結決算の業績予想を大幅に再下方修正し、通期の営業損益が1500億円の赤字になるとの見通しを発表した。赤字転落は83年6月期の連結決算開示以来初めて。ホンダも下期の赤字転落を予想しており、日本の自動車メーカーも世界的な景気後退の波にのまれ総崩れの様相を見せ始めた。
単体決算も創業後間もない38年3月期以来71年ぶりとなる2200億円の営業赤字(前期は1兆1086億円の黒字)と予想する。
前期の営業損益は2兆2703億円の黒字で、わずか1年での赤字転落となる。世界的な自動車販売の落ち込みと過度な円高で下期の営業利益予想は7320億円もの赤字となり、上期に稼いだ5820億円の黒字を完全に吹き飛ばす見込みとなった。
連結売上高の見通しは21兆5千億円(前期比18.2%減)に下方修正する。
日米欧を中心とした販売不振で、連結販売台数見通しも824万台から754万台に下方修正。販売減は同比1兆1800億円の減益要因になる。「経済市場の変化が激しい」(渡辺捷昭社長)として、毎年末発表してきた翌年(09年)の世界生産販売計画の発表は見送った。
急激な円高で下期の想定為替レートも1ドル=100円から93円、1ユーロ=130円から123円に変更する。為替変動で、営業利益は前期から8900億円も減る見込みだ。
トヨタは、販売減に伴い減産態勢を強化する。来年1月以降、全世界に75ある車両生産ラインのうち16ラインで2交代制勤務を半分に短縮する。国内では工場の一斉稼働停止日を設定し、1月には3日間設ける。11月末に4700人在籍した期間従業員数は、期間満了による自然減で3月末に3千人まで減らす方針だ。
また、利益確保のため、今期1兆4千億円を見込む設備投資も来年度以降1兆円以下に減らす。工場新設や能力増強の実施時期も延期し、生産規模を縮小する。10年後半としていたハイブリッド車プリウスを生産する米ミシシッピ工場の稼働を翌年以降に延期するほか、10年稼働予定のインド第2工場の生産規模を縮小。いすゞ自動車と進めるディーゼルエンジンの共同開発は凍結を検討する。赤字転落を受け、今期の役員賞与はゼロとする。
F1からの撤退表明など収益改善に努めるホンダも、09年3月期の下期は営業赤字に転落する見通しで、減産に伴い今年度内に期間従業員を3割近く削減する。日産自動車も年度内に派遣社員と期間従業員を全員削減。カルロス・ゴーン社長が自動車業界に対する政府支援の必要性を訴えており、日本の自動車各社も抜本的な立て直しを迫られ始めている。(福田直之)