ソニーが大規模なリストラを発表した。液晶テレビやデジタルカメラなどのエレクトロニクス事業について、全世界で計1万6000人以上の従業員を09年度末までに削減するという。
米国発の金融危機に世界経済は大きく揺さぶられている。米国の自動車メーカーは、政府の救済がなければ倒産が不可避の状態だ。トヨタをはじめ日本の自動車メーカーも業績を大幅に下方修正している。
家電でもパナソニックやソニーがすでに業績を下方修正しているが、欧米のクリスマス商戦は厳しい状態で、今後も需要の落ち込みが続き、回復は当分期待できそうもない。
そうした状況の中で企業を守るには、人員削減や設備投資の減額を含む大規模なリストラを実行しなければならないと、ソニーは判断したのだろう。
国内外の製造拠点は57カ所あり、そのうちの5~6カ所を閉鎖する。エレクトロニクス事業の正規社員は16万人で、その5%に当たる約8000人と、派遣社員など非正規雇用の従業員8000人以上が人員削減の対象となる。
厳しい金融の状況を考えると、財務の健全性を維持しておきたいところだろう。日本国内での人員削減の詳細は不明だが、他の企業でも派遣社員の解雇が相次ぎ、多くの人が居住する場もない状態に陥っている点が心配だ。
ネットカフェ難民やホームレスの増大を防ぐため、政府は対策を急ぐべきだ。企業側にも柔軟な対応を求めたい。
ソニーは03年4月に業績の大幅下方修正を発表し、それをきっかけに株価が大きく下がった。ソニーショックと呼ばれたが、05年には経営陣を刷新してリストラを進め、エレクトロニクス事業の再生をめざした。
主力の薄型テレビで09年3月期に黒字化をめざしていた。しかし、価格競争が激しいうえ、景気後退も重なり赤字から抜け出せそうもない。デジタルカメラやビデオカメラも失速し、再び大規模なリストラを余儀なくされた格好だ。
かつてのようなソニーらしいヒット商品が出なくなっていることも、経営の足かせとなっている。
ソニー製のゲーム機の性能はハード面で優れているものの、ソフトウエアとの組み合わせで人気を集めた任天堂が市場をリードしている。携帯音楽プレーヤーでも、アップルのiPodに主導権を握られている。
再度の大リストラは、世界経済の急速な冷え込みが原因だ。ただ、業績不振はソニーに限ったことではない。
メーカーが多過ぎるとかねて指摘されてきた日本の家電産業にとって、今回の世界的な不況が、集約・再編を促すかもしれない。ピンチをばねにして、日本の家電産業が再起することを期待したい。
毎日新聞 2008年12月11日 東京朝刊