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2008-09-10

TVクルーに人気の政治家は TV業界のワーキングプア問題

小耳に挟んだ話。

政治家に取材に行く場合、NHKは別として、民放だと制作会社の撮影クルーがくっついていく。
TV業界は
 典型的な格差社会
である。
制作会社は、
 現代の女工哀史並ワーキングプア
と称されるように、下請け・孫請けで仕事を受けており、高い給与の局員と比較すると1/3以下の年収しかなかったりする。最近のように、企業が広告費を出し渋っていると、制作費は圧迫されるから、いよいよ制作会社社員の生活も仕事もしんどい。

ところで、政治家の中でも、ある制作会社クルーに人気があるのは誰かというと、これが与党議員ではないのだ。わたしが聞いた話では
 ある野党大物議員(民主党ではない)
なのだという。
それは、その野党大物議員が
 この人たち(制作会社のTVクルーのこと)は、正規の局員と違って、もの凄く安い給料で働いてるんだからね。
と、取材に行くと、わざわざ食事を用意してくれるからだとか。それも、ありきたりなそこらのホカ弁などではなく、ちゃんとした、結構名の通ったところの弁当を前もって注文してくれるのだという。さくら水産のワンコイン定食ご飯お代わり自由で、日々の激務を乗りきっている、30-40代も混じるTVクルーにしてみれば、政治家からこうした形でねぎらわれるのは、予想外のことだろう。
そんなわけで
 次の選挙は、その党に入れる
と言っている制作会社クルーがいるそうだ。

食い物の恨みも恐ろしいが、一飯の恩というのも、結構なものだ。
とある野党大物議員畏るべし。
最近は親分肌の政治家は減っているけれども、末端の人間へもこうした細やかな気遣いができるところが、その野党大物議員の凄いところだとは思う。

与党に取材に行って、末端のTVクルーがご飯をご馳走になる、なんて話はついぞ聞いたことがない。

続き。
NHKの中の人から
 それって、「飯で票を買う」んだから、褒められた話じゃないだろ
というメールが来た。
 場合によっては、「選挙違反」だと見られなくないのか
とも。で、
 そんなんで感動するなら、そんな制作会社の社員はTVの仕事をやめたらどうだ。ジャーナリズムは厳しくあるべき
とも。
 外部プロの収入が低いのはわかるけど
という条件付きでだ。

原則論として、NHKの中の人の議論は理解できる。そうした制作会社のクルーが
 感動するのが情けない
と思う気持ちもわかる。
でも、なぜ制作会社のクルーが
 たかが一飯くらいで「感動」する
のかといえば、
 ジャーナリズムと遠いところで制作会社は仕事をしていかざるを得ないほど、逼迫しているから
だろう。
制作会社社員は、
 ジャーナリズム
などということを考える暇がないくらい、安くて、忙しい仕事をすることで
 キー局の放映
を支えている。それは見事なくらい、
 勝ち組=局員(NHK含む)と負け組=制作会社(一部大手を除く)
の貧富の差は大きい。これを
 自動車会社の本社社員とその会社の工場の派遣社員
に比べてもいいくらいだ。
 恒産なければ恒心なし
で、口に糊するのがやっとの生活であれば、一飯の恩は大きい。もし、
 政治家から飯を食わせて貰うのがいかん
というのであれば、その前に
 よそからタダ飯を食わせて貰わないとしんどいくらいに追い込まれている、制作会社の制作費を上げてやれ
と思う。
 そこまで追い込まれている
ことを見ない、というより、そこまで追い込んでいるそもそもの原因が
 制作会社社員の低収入とそれを生んでいる日本の放送界の歪んだ構造
ではないのか。
いくら
 人権とか平和とか正義とか感動とかをメインにした番組
を流していたところで、そのコンテンツを作るためには
 局員の1/3以下の収入でこきつかわれている制作会社
が必要である。
 ワーキングプア
を訴えている番組にも、おそらく制作会社が、ビデオを編集したり、リサーチを手伝ったり、取材クルーとして参加したりしているだろう。これが
 現代のブラックジョーク
じゃなかったら、一体何だろう。

人は追い込まれると、信義を売ることがある。食うや食わずやで仕事をしている制作会社の実態は、若者には有名になっていて、まともな若者はなかなか制作会社に入らなくなってきた。これまでテレビ業界は、下請け・孫請けの人間を使い潰してきた。その挙げ句、制作会社を構成する社員の平均年齢は上がってきている筈である。少子化は進んでいるから、若者は低収入の3K業界を選ばない。放送を続けていくには、制作会社がないとどの局も困るのだが、いま、人は次々辞めている。人手が足りている制作会社がある、という話はあまり聞かない。
そして、30代40代になった時点で、放送人の転職が難しいことは、たぶんNHKの中の人もよくご存じだと思う。NHKは若手の退職が相変わらず多いと聞くが、放送人や新聞記者が転職できるのは、大学の教員になることを除けば、35歳までが勝負だ。放送人や新聞記者は潰しが利かないので、最近は語学力などを生かして外資系コンサルタント会社に転職する以外は、30前でないとムリという話も聞く。マスコミ人は会社名の入った名刺でどこへでもエラそうに取材に行く姿勢が、習い性となって、プライドがむやみに高すぎ、一般企業からは敬遠されているという。普通の社会人が備えているべきマナーをまったく身につけていないので、最初から書類ではねている企業もあるそうだ。
制作会社の場合は、プライドが高いわけではないが、特殊技能で飯を食ってきたので、やはり潰しが利きにくいことは間違いない。

理想論も原則論も通じなくなるほど、窮している人間は、目の前の一飯にも動かされる。
それは、日本の政治の魅力がなくなっていることとも通底しているだろう。
それと、NHKの中の人が見落としていることがある。
TVクルーは、用意してくれた弁当があったから、その党に投票しようと思ったわけではあるまい。
 目の前にワーキングプア問題を抱えている人間が働いている
ということを、認識している政治家がいたことに感動したというのが、本当のところだとわたしは思っている。選挙違反を疑われるかもしれない「一飯」を用意してでも、ワーキングプアの制作会社社員をねぎらいたいと、その政治家は思ったではないのか。いくら何でも、政治家もその辺りは理解していると思う。党勢拡大とか、そうした小さい話ではないだろう。
制作会社社員は、局員には犬のように扱われたりするのだから、粗略に扱われるのには慣れているが、働く一人の人間、しかも今問題になっている「ワーキングプア」と見てくれるヒトがいたのだ。それは字義通り「有り難いこと」だったのではないのだろうか。

格差社会を指弾するマスコミそのものが
 格差社会を内包する歪んだ構造
なのである。当然ながら、格差社会の不当性を声高に叫ぶ新聞社やテレビ局が、その手足となって働いている、目の前の「ワーキングプア」を顧みることはない。

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受信: 2008-09-10 23:14

コメント

>食い物の恨みも恐ろしいが、一飯の恩というのも、結構なものだ。
わかります。研修医の時の当直先も、給料、忙しさ、ご飯の美味しさが選択基準でしたから。

当時人気の某銀杏病院は、おいしい食事がこれでもか、、とお盆一杯に出て来て、味、量とも、カップラーメンも食べられずに一晩中働いていた研修医には、あこがれの当直先でした。

投稿: 麻酔科医 | 2008-09-10 08:50

テレビ局のワープア問題・・・。

ウチの店にお昼ご飯よく食べに来てくれる某地方局(テレビ局単営)の皆さん。

正社員の制作スタッフは頭茶髪wでも着るモノ穿く靴そこそこ小綺麗なのに
下請けの制作会社の皆様達はどちらともちょっと(ry

あまりこんな事言うと失礼に当たるのかも知れないけれど
格差社会を批判しまくってる当のテレビ局自身が格差社会を抱えてる、
視聴者側からすると目の当たりにして複雑な気持ちで一杯です。

投稿: おばQ | 2008-09-10 16:34

>人は追い込まれると、信義を売ることがある。

http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/1297/818
orz

投稿: BUNTEN | 2008-09-10 19:10

遅れましたが、中の人間からひと言。

「勝ち組=局員(NHK含む)と負け組=制作会社(一部大手を除く)の貧富の差は大きい。」
まさにそうです。

特に会長が変わってから、既に通っていた企画(年計)の1/3が中止になりました。
新会長就任は、制作費使途見直し・予算削減を敢行することを見込まれての事ですから、
実行前の企画中止は致し方ないと思いますし、今後のためにはいい事だと、個人的には思います。

ただし、問題は「中止」とならなかった企画の多くも、
劇的に予算が削減・変更されたことです。

その割の合わない企画を遂行するのは誰か、というと、下請け制作会社(私たち)。
一方的に削減を告げられ、どう訴えても「それで何とかやってください」の一点張り。
リサーチや撮影にかかる時間やお金は、制作会社の努力だけでは削れないのです。
局側から何らかの助力やカバーがあるならまだしも、「でもクオリティーは下げないでね」とのトドメ。
赤字になるのは火を見るより明らかなのに、一体どんなマジックを期待しているのでしょうか。

やっても赤字だとわかっていても、今後の付き合いのためにやらざるを得ない。
なぜこんな辻褄の合わない要求が通るのか、この買いたたき状態がいつまで続くのか、
いろいろと考えさせられる昨今です。

そりゃあ、弁当食べさせてもらったら恩に着ますよ・・・。

投稿: popo | 2008-09-17 23:31

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