国民健康保険(国保)の「子どもの無保険」問題を解消する改正国民健康保険法が19日、成立した。保険証のない子どもたちの存在は世論を動かし、中学生以下の一律救済へと国を動かした。市民運動で声を上げた人や有識者に、解決の経緯やさらなる課題を聞く。
子どもは生まれてくる親も地域も選べない。今回の国民健康保険法改正で、バラバラだった市町村の対応が統一され、中学生以下の子どもが全国一律救済される。本格的に運動を始めた半年前、ここまで改善されるとは想像しなかった。報道や、早急に動いてくれた国会に感謝したい。
取り組むきっかけは、昨年10月に大阪であった、貧困など子どもを取り巻く状況について考えるシンポジウムだった。参加した養護教諭から、保険証がなくて病院に行けず、「湿布くれ」と頼んでくる小学生のことを聞いた。保険証がないことを子どもたちは分かったうえで、学校で訴えているのだと知ってショックを受けた。「無保険の子」が大阪府内に何人いるかを調べようと考え、今年4月に初めて各市町村にアンケートを依頼した。
回答があった17市町村に、628人の子どもがいることがわかった。病院に行けずにじっと我慢している子どもたちが、果たして自分や社会の未来に希望を持てるだろうか。
今夏の時点では、ほとんどの自治体が「法律を守る」として救済には乗り出さなかった。厚生労働省の全国調査後、大阪市をはじめ多くの自治体が独自救済策を打ち出した。大きな転換点だった。
しかし、法律ができても、子どもが本当に必要な医療を受けているかは監視していく必要がある。保険証も、保険料の納付相談を前提とした窓口交付では、お金がない親はためらって取りに行かない恐れがある。
貧困から子どもを守るには、生活保護や法律相談、児童虐待などさまざまな部署がかかわらなくてはならない。私たち民間団体でも蓄積した知識やノウハウをつなぐネットワークを作り、具体的な取り組みを急ぎたい。
毎日新聞 2008年12月19日 東京夕刊