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社説:「無保険」の子供 迅速な全国一律救済は朗報だ

 国民健康保険(国保)の保険料を親が滞納したために「無保険」状態になっている子供に対して、来年4月から保険証が交付される見通しになった。与野党が国保法の改正案に合意、今国会での成立が確実となったためだ。「無保険」状態にあった3万3000人の中学生以下の子供たちにとっては朗報といえる。

 毎日新聞は「滞納の責任は子供にはない」として、早急に全国一律に子供たちを救済する仕組みを作るよう提案してきた。与野党が歩み寄って迅速に「無保険」の子供の救済が図られるようになったことを高く評価したい。

 民主党など野党は18歳未満を救済する独自の改正案をすでに提出していたが、与党と協議して15歳以下に年齢を引き下げることで折り合った。麻生内閣の支持率が大きく落ち込み、与野党の対立が激しさを増している中で「無保険」の子供を救うための法案で与野党が合意した意味は大きい。

 国保法は保険証の交付を原則、世帯単位で行うよう定めており、親が保険料を1年以上滞納した場合、自治体に保険証を返還する規定になっている。「無保険」となると、医療機関の窓口では全額自己負担となってしまう。この結果、「子供が病院に行かなくなる恐れがある」など、受診抑制の広がりを危惧(きぐ)する声が出ていた。

 子供の「無保険」については、自治体で対応にバラつきがあることも問題になっていた。毎日新聞の調査では「無保険」の子供がいた全国816自治体のうち、235自治体が救済に乗り出していた。この結果、「無保険」状態にある子供のうち、1万3000人に対して救済の手が差しのべられた。だが、「自治体独自の救済は国保法に違反する疑いがある」として二の足を踏む自治体もあり、約2万人の救済のメドは立っていなかった。

 本来、自治体によって対応が違うのはおかしなことだ。国保法の改正によって、全国一律に救済が図られ、不公平な対応が解消されることは望ましいことだ。

 保険証の有効期間は通常は1年だが、「滞納を助長するのではないか」という指摘もあることから、6カ月とする。再交付の際には、滞納している親などに対して納付を積極的に働きかけることになる。自治体はあらゆる機会をとらえて保険料の滞納防止に全力を尽くすべきだ。滞納者が増えれば国民皆保険は崩れてしまう。「無保険」の子供の救済はあくまでも、人道的、例外的な措置であることは指摘しておきたい。

 今後の課題は、15歳以下とした救済対象者の年齢の引き上げだろう。新制度の実施状況や、16~18歳層の実態も調査し、次の段階として18歳未満までは保険証を交付する仕組みを検討してもらいたい。

毎日新聞 2008年12月10日 0時01分

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