荒尾市は、約41億円の累積赤字を抱える市民病院(大嶋壽海院長、274病床)の再建計画をまとめた。2年後の単年度黒字化を目指しており、そのためには6人の医師確保が最重要課題。来年4月には、予算や人事権を持った独立採算の公営企業に衣替えして計画に取り組むが、肝心の医師確保のめどは立っていない。【西東靖博】
09年度から5年間の中期経営計画で、公立病院の経営改革を促すため、国が08年度限定で認めた特例債を活用する。償還期間7年で14億円を起債した。
計画では、これを原資にして、金融機関から借り換えを繰り返して「不良債務」化している21億円を7年間で返済し、経営の足かせの一つを解消する。さらに6人の医師の確保で患者数を増やし、08年度4億1000万円の赤字を、09年度は7900万円に圧縮し、10年度に7200万円の黒字に転換する。
新たな医師は来年4月から2人の常勤が決まっており、さらに3年間で4人を確保して現在の28人から34人体制にする。計画最終年の13年度の総収入は、07年度の43億円から21%増の52億円にすることを目標にしている。
不安材料は、医師確保の成否に加え、財源を市の一般会計からの繰入金に依存している点だ。08年度の4億5000万円を09年度から4億9000万円に増額し、毎年度繰り入れる。他にも病院特例債償還分の2億円や勧奨退職者の退職金の一部も賄うため、09~15年度の繰入総額は7億5000万円~8億円に上る。
このうち3億5000万円は、病床数などから算出される国の交付金で補てんされるが、残りは市の持ち出しとなるため、最悪の場合、財政調整基金など各種基金残高の16億円を取り崩して充てる。
職員給与カットなどの行財政改革を進めている市は“背水の陣”で病院再建に取り組む覚悟を見せた。前畑淳治市長は「病院の収支を改善しなければ、一般行政が機能不全に陥る。6人の医師確保を絶対命題として、計画以上の収支改善をやり抜かねばならない」と再建にかける意気込みを語っている。
明るい兆しも見え始めた。今年度の入院外来収益(10月末現在)が前年同期比で約1億円増となった。荒巻正弥副院長は「患者が戻ってきている。今年度の赤字は見込みの4億1000万円を下回る」と言う。
大嶋院長は「院長の責任として残る4人の医師確保に取り組み、地域中核病院としての役割を果たす」と決意を表明している。
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■ことば
04年に始まった新しい新任研修医制度で、同年45人いた常勤医は減り続け、現在28人。小児科や消化器内科など6診療科の医師が不在となった。この結果、07年度決算で、延べ入院患者が前年度比2万2000人減り、医業収益も同3億6400万円減となった。単年度赤字は12億5000万円で、累積赤字は41億400万円に膨らんでいる。
毎日新聞 2008年12月23日 地方版