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東京裁判判決から60年 冷静な史料研究続々

2008年12月23日11時5分

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 第2次世界大戦後、連合国による極東国際軍事裁判(東京裁判)で判決が下され、東条英機元首相らA級戦犯7人への死刑が執行されてから、23日で60年。

 これまで、裁判を肯定する「文明の裁き」論と、否定する「勝者の裁き」論が対立してきた。日本の植民地支配や侵略行為を正当化し、「東京裁判はあの戦争の責任を全(すべ)て日本に押し付けようとした」と論文に書いた田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長(当時)が更迭されるなど、論争は今も続く。

 一方で、一次史料を踏まえた冷静な研究も出てきた。

 例えば、日暮吉延(ひぐらし・よしのぶ)・鹿児島大教授の『東京裁判』(講談社現代新書、サントリー学芸賞)。日暮氏は「東京裁判は何よりも『国際政治の場』だった。連合国は裁判で日本を無害化しようとし、日本政府も裁判の受容に利益を見た」というが、「この解釈が主流になることはないでしょう。それでも、史料に基づいた分析は必要です」とも話す。

 国内の史料では、東条元首相の日記を使った保阪正康『東京裁判の教訓』(朝日新書)や、A級戦犯容疑者だった故・笹川良一氏の書簡を収めた伊藤隆編『笹川良一と東京裁判』全3巻(中央公論新社)が出た。

 海外の史料を用いた研究としては、東京裁判を国際人道法の発展史に位置づけた戸谷由麻『東京裁判』(みすず書房)や、通訳の問題を分析した武田珂代子(かよこ)『東京裁判における通訳』(同)がある。

 「平和に対する罪」でA級戦犯28人を裁いた東京裁判と合わせて考えるべきなのが、「通例の戦争犯罪」で約5700人を裁いたBC級戦犯裁判だ。

 BC級戦犯として処刑された理髪店主を描いた映画「私は貝になりたい」がリメークされて上映中だが、シナリオが同名書で刊行された(遺書・原作 題名=加藤哲太郎、脚本=橋本忍。朝日文庫)。

 ただし、林博史『戦後平和主義を問い直す』(かもがわ出版)は、映画のヒントとなった文章を書いた故・加藤氏は、映画とは違い、上官の命令だから仕方がなかったと言い訳せず、自らの責任を問いつめていたと指摘する。

 また、BC級戦犯には、日本軍の捕虜収容所監視員として捕虜虐待などの罪で有罪となった朝鮮人148人、台湾人173人が含まれている。

 彼らが生み出された経緯を明らかにしたのが、内海愛子・早稲田大客員教授の『キムはなぜ裁かれたのか』(朝日選書)だ。内海氏はいう。「この問題は、一人一人が戦争にどうかかわったかを考えさせます。組織の中の人間が命令にどう抵抗し、どう行動するのか。今の私たちと重なる問題です」(石田祐樹)

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