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【経済】

ばらまき色濃く 景気効果に疑問 総選挙見据え配慮

2008年12月21日 朝刊

 麻生政権が二〇〇八年度補正予算、〇九年度予算を一体化した“十四カ月予算”で巨額の財政出動に踏み切る。財政再建より景気回復を優先する先進諸国の合意に沿った戦略だ。しかし、膨れ上がった数字に比べ、政策の中身は総選挙も見据えて与党、地方に配慮したばらまき的な要素が色濃く「景気浮揚効果は限定的」(アナリスト)との見方が大勢だ。

 「(〇八年度)一次補正、二次補正、(〇九年度)予算と間断なく対策を取り、作業自体が歴史に残る」。中川昭一財務相は、〇九年度予算の財務省原案を内示した二十日の閣議後会見で政府の対策に自信をのぞかせた。

 確かに、福田政権下で八月にまとめた「緊急総合対策」から、麻生政権が十月にまとめた「生活対策」、十二月の「生活防衛のための緊急対策」まで合計すると、事業規模は七十五兆円、財政出動は対国内総生産(GDP)比2%程度の十二兆円にのぼる。

 〇九年度予算で一兆円規模の予備費新設、地方交付税一兆円増額をぶち上げたのも、雇用創出で景気を下支えするのが狙い。税制改正では、過去最大規模の住宅ローン減税などを盛り込んだ。

 しかし、景気後退のスピードに追いつかずに、旧態依然の政策を付け焼き刃的に並べた感は否めない。

 その典型は、〇八年度二次補正に計上した二兆円規模の定額給付金だ。貯蓄に回り消費に使われない可能性が高く、内閣府の試算でさえ、実質GDPの押し上げ効果はわずか0・2%にとどまる。

 首相自らの指示で〇九年度予算で増額された地方交付税も、本来の目的である雇用創出には、半分の五千億円しか振り分けられない。

 残りは一般行政経費に計上されたため、財務省幹部は「人件費や借金返済に活用される可能性が高い。使い道の追跡調査が必要だ」と地方活性化への効果には懐疑的だ。

 新予備費は、経済がさらに悪化したときに備えた社会資本整備用の「ストック」だ。総選挙が近付けば、自民党道路族らが選挙対策として標的にする可能性もある。

 景気対策は、その時々の最も適した施策でなければ効果は出ず、ただのばらまきに終わることは、過去の歴史が雄弁に物語っている。今回の一連の政策決定過程から、その教訓が生かされた形跡は感じられない。

  (東条仁史)

 

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