全国チェーンの日本料理店「日本海庄や」の店員、吹上元康さん(当時24)が急死したのは過酷な残業が原因だとして、京都市に住む両親が東証1部上場の経営会社「大庄」(東京)に約1億円の賠償を求める訴訟を来週にも京都地裁に起こす。両親は「月80時間」の時間外労働をこなさなければ給与から不足分の賃金が差し引かれる制度によって過労死に追いやられたと主張している。
両親によると、吹上さんは大学卒業後の昨年4月に大庄に入社し、大津市の「石山駅店」に配属された。同8月、自宅で就寝中に亡くなっているのを母親が見つけた。死因は急性心不全と診断された。亡くなるまで4カ月間の時間外労働は月平均98時間余りで「2カ月以上にわたって月平均80時間以上」という厚生労働省の「過労死ライン」を超えていた。大津労働基準監督署は今月9日、その死を労災と認める決定をした。
争いになるとみられるのは時間外労働をめぐる取り決めの実態と、会社側の説明内容だ。
両親側によると、大庄の担当者が作成したとされる「給与体系一覧表」では、吹上さんら一般職から管理職の店長・調理長までの8分類について、等級や最低支給額、手当や賞与の有無などが表になっていた。この表によると、最低支給額は吹上さんら一般職が最も低く月19万4500円で、最高は管理職の店長・調理長の月31万5千円〜。しかし、欄外には一般職の最低支給額についてのみ、1行のただし書きがあり、「時間外(労働が)80時間に満たない場合、不足分を控除するため、本来の最低支給額は12万3200円」とされていた。吹上さんはこの給与体系を入社3週間後の新入社員研修で初めて知らされたという。両親は「事前に説明を受ければ入社せず、過労死することもなかった」と語る。